科学の分野において人間はネズミから多くのことを学んできた。実験動物の王様であるネズミは歴史上最も人間代わりになってきたからだ。その意味で、ネズミを見ると人間も見える。
ネズミは傷つくのを避け、他のネズミを見捨てないという共感性を持っている。さらに、ネズミの共感性にも人間同様に個性があるらしい。他者の痛みに敏感なネズミもいれば、自分の利益を優先するネズミもいるのだ。
日常で見かけるネズミはドブネズミだけではない
そんな「人間味」溢れるネズミの生態を紹介するのが、『ネズミのおしえ ネズミを学ぶと人間がわかる!』(篠原かをり著、徳間書店刊)だ。 著者であり作家の篠原かをり氏は、慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院在学中。「生物をこよなく愛する理系女子」としてクイズ番組「Qさま!!」に初出場し優勝。その後、『世界ふしぎ発見!』『新どうぶつ奇想天外!』『有吉ジャポン』などテレビやラジオで活躍している。ネズミに魅せられ自宅でも、ドブネズミやハツカネズミ、スナネズミ、コビトハツカネズミ、ハムスターなど累計40匹以上の飼育経験がある。
ネズミの仲間である齧歯目の動物は2000種から3000種と、現在確認されている哺乳類の約半分を占める。
私たちがネズミと聞いて想像するネズミの多くは、齧歯目のネズミ亜目に含まれている。日本には数十種類のネズミが存在しているが、私たちが日常触れ合う可能性のあるネズミは、ドブネズミとクマネズミとハツカネズミの3種である。
ちなみに外で見かける大きなネズミがドブネズミ。実験動物としてはラットと呼ばれている。次に大きいのが屋根裏にいるクマネズミ。実験動物化はされていないそうだ。手のひらに包んでしまえそうなほど小さくて農村や農耕地を中心に見かけるのがハツカネズミだ。実験動物としてはマウスと呼ばれている。
笑うネズミたち
ネズミにまつわるトリビアをもう一つ。身の回りに実はよくいるネズミたちは、笑うことが確認されている。ネズミが笑うという論文が出たのは1999年のこと。2016年には、ネズミが笑うときの表情や活動している脳の部位が解明された。ネズミは母ネズミに可愛がられているときや子ネズミ同士でじゃれあっているときに笑い声をあげるのだそう。実験では、人間がくすぐってネズミを笑わせることもできたという。
ただ、残念ながら人間の耳でネズミの笑い声を聞くことはできない。人間の耳が聞くことのできる音の可聴域は20Hz~20000Hzと言われている。しかし、20代から聴力は徐々に低下し、狭まっていく。30代以降で16000Hz以上の高い音域が聞こえる人は稀だ。そして、ネズミの笑い声は、50000Hz。ネズミは人間の耳では聞こえないくらい高い音で笑っているのだ。
ちなみに、ネズミが不快なときに出す声は20000Hzといわれている。耳のいい若い人であれば、ネズミのうんざりした声を聞くことができるかもしれない。
ペットとして、ハムスターやモルモットを飼ったことがある人もいるだろう。個性もあり、笑うこともある身近なネズミの生態を本書から学んでみてはどうだろう。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。