『半沢直樹』が平成の民放ドラマ最高の視聴率を記録したということは、世の中のビジネスパーソンたちも、多かれ少なかれ理不尽な経験をしているのではないでしょうか。
そんな理不尽な時代に立ち向かい、上手に世渡りをするための方法とは、どのようなものでしょうか?
●社内プロジェクトにおける理不尽
業種・企業規模にかかわらず、また社内・社外を問わず、プロジェクトの責任のなすり合いはよくある現象です。
例えば、上司が社内のあるプロジェクト(新規事業、システム導入など)の担当になった場合、実務はその部下が担当することになります。計画通りにプロジェクトが進行すれば、なんの問題もありませんが、進捗が芳しくない場合、上司が部下に責任を押し付けることがあります。
有能な上司であれば、プロジェクトの遅れをいち早く察知し、問題点を明らかにして計画を見直したり、場合によっては新たな担当を配するなど、リカバリーに努めるはずです。
ところが無能な上司は、プロジェクト全体が見えず、部下の報告に問題があっても気付きません。なかなか成果も上がらず、対策が遅れ、損害が大きくなります。そしてその責任を部下に求めたりします。
●社外プロジェクトでの理不尽
社外プロジェクトなどでは、仕事を受託する部門の業績が堅調であれば、仕事内容に応じて十分な時間と人員を割くことができますが、業績の悪化している部門では、往々にして無理な仕事を受託してしまうことがあります。
例えば、本来1億円での受注が妥当なプロジェクトであるのに、仕事が欲しいばかりに現場を知らない上司が5000万円で安請け合いしてしまうようなケースです。費用が半分になるわけですから、原価や人件費などの経費を極限まで削り、その上、利益はほとんど見込めない。その部門に所属している社員は疲弊していくことになります。
そんな案件で、5000万円の範囲内でクライアントの依頼に応えなければ、担当者の責任が問われ、逆にうまく成果を出せた場合には、仕事を受注してきた上司の手柄になります。
ちなみに、私の親しいコンサルティング会社では、このような明らかに赤字が予想されるプロジェクトを「戻りカツオの案件」と呼んでいるのですが、このような案件を処理すると、問題解決能力が高いと評価される場合があります。従って勘どころの良いマネージャーは、プロジェクトが焦げ付く直前まで放っておいて、ギリギリの線で助け舟を申し出ます。
火を噴きそうな時点では、プロジェクトの成果は求められず、マイナス幅をなるべく小さくして終了させることが求められます。終了させるに当たっての要件は、次の2つです。
(1)プロジェクトの報酬を回収すること
(2)顧客との関係性を維持すること
●旧態依然とした体質の会社では、失敗の責任を負わされやすい
会社が旧態依然とした古い体質の場合、評価基準は減点方式です。そのため、チャレンジ精神が失われて、リスクの少ないことにしか取り組まない社員が増加しています。
また合併によってできた会社は、仮に対等合併であっても、社内での派閥争いは激しくなり、他人を蹴落としてでも良いポジションに就こうと、責任のなすり合いが増えてきます。『半沢直樹』も同じような設定です。
一方、ベンチャー企業は、チャレンジして失敗した場合の寛容度は高いと思われます。
●実際に倍返しができるのか?
理不尽な仕打ちを受けた部下が倍返しを可能とするために、絶対に必要な条件があります。
例えば、倍返しをしたいターゲットとなる課長と、その上長である部長との関係性が良くない状態であれば、倍返しのチャンス到来です。さらに本人が部長に気に入られていれば、倍返しは成功する可能性が高まります。
逆に課長と部長の関係性が良い場合は、倍返しを企んでいる側が確実に不利です。「君は課長の言うことを聞かないそうだね」などと課長、部長を敵に回しかねません。完全に負けムードです。
また、課長を陥れようと、重要な情報を伝えなかったり、資料を渡さなかったり、顧客との信頼関係を壊すようなトラップを仕掛けることもできますが、バレた場合には服務規程違反になりますから、自らの首を絞めかねません。
倍返しをしたいなら、まず自らが置かれた状況を的確に分析し、味方をつくるなど十分な根回しが必要です。
●部下から「倍返し」されないために
さて、今度は逆に上司の視点で見てみましょう。
部下が上司に対して感じる理不尽なこととは、次の3つに集約されると思います。
(1)責任を押し付ける
(2)手柄や成果、アイディアを取られる
(3)言っていることがコロコロ変わる、一貫性がない