サメと忍者が戦う話題の国産サメ映画、『妖獣奇譚ニンジャVSシャーク』に出演中の宮原華音。これまではアクション女優として戦闘シーンを多く演じてきたが、今作では初となる同性とのキスシーンや、主人公との恋愛模様など、複雑な乙女心を演じる一面にも挑戦。複雑な役に入り込むため、「主人公を演じる平野(宏周)くんの写真を見続けました(笑)」と吐露した宮原。空手の大会で全国優勝するなど、一見強いイメージを持つ宮原の新しい一面に迫った。
ーー宮原さんはこれまで坂本浩一監督と何度もコンビを組まれてきたかと思います。今回、女性の忍者『菊魔』役がきた時の心境を教えてください。
坂本監督の作品に出演するのは今回で6作品目ですね。過去には、普段アイドルとして身を隠しているくのいち役を演じたこともあって、なんとなく今回も役柄はイメージできてました。きっと衣装は袖なしなんだろうなとか、アクションシーンが多いんだろうなとか。実際、衣装も現場の雰囲気も思った通りでした(笑)。
ーーというと、今作は比較的演じやすかったですか?
アクションはいつも通りだったんですけど、どちらかというと芝居の面で苦労するシーンがありました。菊魔は、主人公の元忍者『小太郎』が好き過ぎて、彼のいる村まで追いかけたり、夫婦になる夢が叶わなかった憎しみから殺そうとしたり、結構こじらせている女性なんです。
そうしたドロドロしたような感情って自分の中にはなくて(苦笑)。もちろん誰かを好きになることはありますが、その人のことを強く思いすぎてこじらせてしまうのはどういう感情なんだろうと……。かなり悩みながら演じました。
ーー癖のありそうなキャラクターですよね。役作りで意識されたことはありますか?
菊魔の役柄とは全然違うんですけど、久々にキュンキュンするような青春映画を観ました(笑)。好きってどういう感情なのか改めて確認したり、恋愛でヤキモキする感覚を思い出したりしてました。
あとめっちゃ恥ずかしいんですけど、主人公を演じる平野(宏周)くんの写真をずっと見てました(笑)。「この人が私の好きな人なんだ!」と言い聞かせているような感じで。平野くんとは過去『ウルトラマンZ』(テレビ東京系)で共演して素の部分も知っているので、余計恥ずかしかったですね(笑)。
ただ、撮影自体はとてもやりやすかったです! 平野くんは明るくて面白い方ですし、年下なのにフラットに接してくれるんですよ。他の役者さんだと、距離が近い場面や戦うシーンで遠慮してしまう部分もあるんですけど、平野くんの場合は「どんと来てください!」と言ってくれるので。「言ったな? じゃあ遠慮なくやらせてもらいます!」と、そこでスイッチが入る感じでした(笑)。
ーー好きな主人公に嫉妬する心情はどのように演じましたか?
今回の撮影は私1人のシーンが多かったんですよ。ただ他の共演者たちは一緒のカットが多くて、私がいないところで皆仲良さそうにしているんですよ。「あれ、私以外のみんなでお風呂行ってるじゃん」みたいな。それで現場ではシンプルに嫉妬してたので(笑)、その気持ちをそのまま平野くんにぶつけました!
ーーそれはシンプルな嫉妬ですね(笑)。他に大変だったシーンはありますか?
桝田幸希さんにキスするシーンがあるんですけど、同性とのキスシーンは初めてだったのでどうしようと思いながら演じてました。そしたら監督に「洗面器に顔つけているわけじゃないんだよ」と言われてしまって(苦笑)。私としてはちゃんとキスしてるつもりなのに、不慣れなのか1番NGが多かったですね。
ーー監督や桝田さんとはどのようなやりとりがありましたか?
私はせっかちなので、演技で急ぎ過ぎちゃう節があるんです。キスシーンもねっとりと時間をかけているつもりが、映像を見返したら「意外と唇を離すのがはやいな」とか。多分、緊張していたんでしょうね(笑)。
監督からも、「もっとゆっくり喋って」とか「目の動き早いよ」と言われることが多くて。それから今作は、アクションと恋愛要素の切り替えを求められるシーンもあったので、「華音、今は可愛い女の子だよ!」と言われてハッとしたり。監督の一言でリセットされることもありました。
幸希さんからは「焦らなくていいよ」「もっと体重かけていいよ」など、いろいろフォローをいただきました。もうめちゃくちゃキスして申し訳ないなという感じなのですが(笑)、幸希さんがドンと構えてくれていたのでふっ切れました!
ーーアクションシーンはいかがでしたか?
アクションシーンは基本、楽しみながらやっています。もともと小学2年生の頃から空手をずっと続けてきたので、いつも堂々と演じられてますね。
逆に、台本読みや撮影の初めのほうはめちゃくちゃ緊張します。アクション女優のイメージが強いので意外と思われるかもしれませんが、根本的な性格は人見知りで引っ込み思案なんですよ(笑)。だからこそいろいろ考えず、シンプルに体を動かすアクションシーンは、アップするような感覚でやりやすいですね。
ーー宮原さんは過去、空手の大会で全国優勝したりと強いイメージもあったので、内気な性格なのは意外でした。
もともと空手も、「私に精神的に強くなってほしい」という理由から、両親に勧められて始めたんです。不審者に会ったときに声が出せるとか、嫌なものは嫌だって言えるとか、ちゃんと礼儀が正しくできるとか。そういう子になってほしかったそうです。
空手やお芝居を通じてネガティブな部分もだいぶ治ってきましたが、今でも容姿に自信が持てなかったり、空手をやっている身長170センチの私より、ちっちゃくて可愛らしい子の方がウケがいんだろうなーと思ったりしてます(笑)。
ーー共演者からも、キャラが意外と思われることも多いのでは?
そうですね。実は“気にしい”なんだけど、周りからはなにも考えていないタイプだと思われがちで、結構いじられたりしてます(笑)。
もう自分の中では、プライベートの私と、芸能活動での宮原華音は別人だと考えています! 普段は席とかどこに座ればいいのか迷うぐらい小心者なんですけど、お仕事なら「アンチもいじられも大歓迎です! どうぞお好きに言ってください!」みたいな(笑)。
ーー根本的な性格は繊細ということですが、アクションから離れた乙女チックな役柄を演じてみたいなどありますか?
基本的にアクションは続けていきたいですが、演技の幅を広げていきたいです! 年下の男の部下を持つOLとか、あざどくてモテる女性の役なんかも演じてみたいですね。やはりテレビで活躍しているような女優さんは引き出しが多いですし、将来的には綾瀬はるかさんのようになれたら最高だなと。
そういう意味で今作は、キスシーンや恋愛要素をふくめていろいろチャレンジした役柄になっています(笑)。アクションが苦手な女性の方にも楽しんでもらえたら嬉しいですね。
(取材・文=佐藤隼秀/ライター)