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「『天気の子』『悪魔のいけにえ』『トゥルー・ロマンス』を混ぜたような作品」 サスペンスホラー×ラブロマンスのジャンル映画、監督が明かす創作秘話

取材・文=佐藤隼秀/ライター
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宇賀那健一監督(撮影=佐藤隼秀)
宇賀那健一監督(撮影=佐藤隼秀)

 久保田紗友が主演を務める映画『Love Will Tear Us Apart』が、8月19日より全国公開される。同作品は、サスペンスホラーとラブロマンスを同居させ、狂気じみた愛を描いた問題作となっている。なぜかけ離れたジャンルを組み合わせたのか、作品を通して伝えたかったことはなにか。メガホンを取った宇賀那健一監督に聞いた。

ーー本作は、「サスペンスホラー」と「ラブロマンス」という、まったく異なるジャンルを掛け合わせた映画となっています。なぜこのような方向に辿り着いたのでしょうか?

もともとは純愛映画を撮ろうと決めていたのですが、自分の表現したいことを詰め込んだら、ラブストーリーにサスペンスホラーが乗っかった形になりました。

そもそも映画において、ジャンルを定義するのはナンセンスだし、単一のジャンルで作品を描こうとするのは難しいと思うんです。例えば、恋愛を描いた作品でも、それが喜劇なのか悲劇なのかは明確に線引きできないはず。純愛だからといって、必ずしもハッピーエンドとは限らないし、ドロドロした人間関係を描いても美しい感情が垣間見える瞬間もある。愛情だって、度を超えれば歪んで見えるかもしれないし、逆に狂気じみていたとしても純粋に映ることもある。

ラブロマンスなのかサスペンスホラーなのか、ドラマなのかコメディなのか、観た人によって感じ方は違うし、はっきりと定義するのは難しい。個人的には、サスペンスホラーとラブロマンスが一緒くたになっているのは自然なことだと考えています。

ーー表現したいことを詰め込んだとありますが、作品の設定や物語の展開で、意識された作品はありますか?

僕の中では、『天気の子』『悪魔のいけにえ』『トゥルー・ロマンス』と、テイストの違う3作品をごちゃ混ぜにしたようなイメージです。

まず作品のテーマは、『天気の子』から着想を得ました。あの作品は、セカイ系と言われた世界に対して、個人の意見を突き通し、世界より隣人を愛する話だと思っています。僕も同じように、個人の感情が強いがゆえに、世界を貫いてしまうような映画を撮りたいと考えていました。ただ、『天気の子』と同じような雰囲気にはしたくなかったので、もっと設定をフィクションっぽくしたかった。

そこで思いついたのが、『悪魔のいけにえ』です。もともとスプラッター映画は好きですが、『悪魔のいけにえ』に関しては、殺人鬼のレザーフェイスに焦点を当てるとヒューマン的な要素も感じる。周りからは怖がられているのに、実は人間らしい一面もある。そこで、スラッシャームービーのようなジャンルや設定の中で、レザーフェイスのような周りから理解されない人間の不器用さを描こうと固めていきました。

そこに後押ししたのが、『トゥルー・ロマンス』です。あの作品には、現実をうまく生きられない人たちが、逃避しながらもがいていく様子が描かれている。『Love Will Tear Us Apart』に出てくる主要人物も、学校でいじめられたり、親から虐待を受けたりしており、どこか抑圧された境遇にあるところを重ねています。

ーー個人の感情を描きたいというのは、監督の趣向ですか?

その中でも、どちらかというとスポットライトが当たらない人物に、焦点を当てたいと思ってきました。特にこれといった理由はないのですが、単純に僕がそそられるのが、枠から外れたようなはみ出た人間だったんです。

これまで監督した作品でも、『サラバ静寂』では音楽が禁止された世界で音楽活動をしている人、『魔法少年☆ワイルドバージン』では30歳を超えた童貞、『転がるビー玉』ではうまくいかない女の子を登場させ、一貫して主流じゃない人の感情を描いてきました。

ーー今作品では、個人の感情をどのように描いたのでしょうか?

例えば、殺人を犯してしまう登場人物にフォーカスを当てた時、周りから見たら異常に思われるかもしれませんが、当人からしたら真剣な動機で動いているケースも多々あると思うんです。好きすぎる女性をストーカーしてしまったりと、常軌を逸するほど愛情が強いうえに事件が起こってしまうこともある。そうした個人の感情が突き抜けるがゆえに、突っ走ってしまう不条理さを描こうと意識しました。

ーー前提はラブロマンスだけど、感情が強烈すぎるがゆえに、不条理さやサスペンスホラー要素も垣間見えてしまうようなイメージでしょうか。

そうですね。例えば、どの人物にフォーカスを当てるかによって、作品の雰囲気もガラッと変わると思うんです。チャップリンの名言で「クローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というフレーズがありますが、まさにそんなイメージです。

当事者からは真剣なんだけど、俯瞰してみると滑稽だったりと印象が変わるように、主観で撮るとシリアスになって、客観で撮るとコメディに近い感じになる。先ほど映画のジャンルを定義するのはナンセンスという話をしましたが、どの人物から映すか、どうやって対象との距離をとるかによってもテイストが変わる。

だからこそいろんな人物の視点から、多層的に世界を描きたいと考えていたら、結果的にさまざまなジャンルが同居する映画になりました。

ーー作品のテイストや雰囲気が変わると、久保田紗友さんや青木柚さんはじめ、キャスト陣も演じるのが大変そうですね。

ただ、久保田紗友さんや青木柚さんにお願いしたのは、「とにかく真剣に演じてほしい」という1点でした。映画が喜劇なのか悲劇なのか、コメディなのかシリアスなのかは、僕がどのような距離感で撮影し、誰に焦点を当てるかの匙加減で決まっていく。

作品の雰囲気をどうするかはこちら側で調整するので、そのぶんキャスト陣には変な駆け引きなく、作中で起こったことをそのまま受け止めてほしいと伝えました。そういう意味では、全力で演じないといけない大変さはあったと思います。特に久保田さんは、殺人を目撃するシーンや、ボロボロに泣くシーンなど、感情の振れ幅が大きかったので、そのぶん疲れただろうなと思います。

逆に、麿赤兒さんや吹越満さんのようなベテラン勢は、俯瞰してみたらどう映るかも考慮しながら演じてくださったのでとても助かりました。

ーー現場の雰囲気はいかがでしたか?

現場自体は和気藹々としていましたが、演者さんたちはクライマックスのシーンをはじめ体力を消耗する撮影だったと思います。アクションもありつつ、感情も昂(たかぶ)らせないとけない。しかもスプラッター描写があるシーンは、血飛沫などセットの関係上、準備に時間がかかるので失敗できない責任もある。ワンシーンごとに消費するカロリーが高かったと思います。

僕の撮影スタイルも、基本的には臨場感が出るよう一発で決めたいタイプ。どうしてもテイクを重ねると、俳優陣もどんどん意識したり、相手の出方をわかるようになるので、どうしても予定調和っぽくなってしまう。極力、段取りとテスト1回ずつでOKを出したいんです。今作でも、「どういう動機で殺しているのか」など、キャストから要望が出たシーンだけ感情の擦り合わせを行い、撮影に挑みました。だからこそプレッシャーもあったでしょうね(苦笑)。

あとは物理的に、撮影が一昨年の夏で、鹿児島・奄美大島のマングローブの森で撮影するシーンがあったんです。当時はマスクもつけないといけなかったし、森を駆け回るシーンがあったりしたので、裏方ふくめ体力を要する現場だったかと思います。

ーーお話をうかがっていると、内容の濃い映画だと思いますが、どのように映画を見てほしいですか。

興味深いと思ったのが、映画祭で上映を行った際、各国で全然反応が違うんです。「いじめとネグレクトに対する新しいアンサー」だとシリアスな意見が多い国もあれば、血が吹き飛ぶたびに悲鳴と大爆笑が上がる国もあったりと、ここまで幅広い捉えられた方をするのかとびっくりしましたね。

大前提として観客によって捉えられ方は変わると思うのですが、同時に何回も観ればより笑えてくる作品になるのかなと思います。先ほども「主観で撮るとシリアス、客観で撮るとコメディ」とお伝えしましたが、観客からしても同じだと思うんです。話の展開や結末がわかると、重たいサスペンスやホラーの場面も、実は滑稽で笑えてくる。そんな映画だと思うので、それを劇場で体感してもらえたら嬉しいですね。

(取材・文=佐藤隼秀/ライター)

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