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ジャンル不問の映画『先生!口裂け女です!』 監督が語る“ヤンキーと口裂け女を共演させた理由”

取材・文=佐藤隼秀/ライター
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ナカモトユウ(撮影=佐藤隼秀)

 原付窃盗で金を稼ぐ高校生ヤンキー3人組が、盗んだバイクの所有者である口裂け女に追われ、物語が展開していく映画『先生!口裂け女です!』。メガホンをとったのは、『死霊軍団怒りの DIY』や 『福山市長に 1 日密着してみた』 を手がけてきたナカモトユウ監督だ。ヤンキーの青春物語に、口裂け女が醸し出すホラーテイストが加わり、さらにアクションやコメディ要素も混ざった、これまでにないジャンル不問の一作。「監督人生として集大成のような映画です」と語るナカモト氏に、作品にこめた想いを聞いた。

ーー今作では、口裂け女とヤンキーという斬新な組み合わせが印象的です。作品の設定はどのように決めていきましたか?

タイトルやビジュアルこそ「口裂け女」が前面に出ていますけど、もともとはヤンキー映画を撮ろうと思ったんです。僕が学生の時、地元の不良で原付を30台ぐらい窃盗して、暴走族に売り捌いているヤバい人がいたんです。そのエピソードをモチーフにしたら面白いと考えたのが始まりでした。

そこから高校生のヤンキーが、盗んだバイクの持ち主とトラブってバトルするという展開にしようと。ただ、持ち主が一般人だったらつまらないので、まったく想像つかないような化学反応が起きる相手にしようと。そこでひらめいたのが口裂け女だったんです。

まず口裂け女は実際に存在するのかも怪しい不気味な存在ですし、バトルしているイメージもまったく想像つかない。僕自身も、怖い話やオカルトが好きなので、自分の実体験と趣味を掛け合わせたような形に着地しました。

ーーホラー要素にバトルシーンが加わったと考えると、作品のジャンルとしても斬新に感じます。

もともとはヤンキーを描いた学園モノに、ホラー要素を混ぜていこうと考えていたんですけど、言ってしまえば「青春モノ×ホラー」ってすでに開拓されたジャンルなんですよ。どうせいろいろ盛り込むなら、誰も撮ったことないようなテイストにしたいなと。

そこで加えたのが「コメディ」要素です。僕自身が、『死霊のはらわたII』とか『悪魔のいけにえ2』に影響を受けているのも大きかった。どちらもホラーでスプラッター描写があるんですけど、どこかギャグっぽくて、「こんなのあり得ないだろ」と突っ込んでしまうコメディ要素もある。遊び心でいろいろと付け足していった結果、ジャンルとしてはごちゃ混ぜになりました(笑)

ーーこれまでにない設定なだけに、作品に落とし込むのは大変そうですね。

それが割とスムーズに進みました。僕自身、ジャンルをミックスさせるのは伝統芸で慣れていたのもあり、プロットをプロデューサーに見せたらとんとん拍子で進んでいきました。

ジャンルや設定は突飛ですが、作品はすべて木戸(大聖)くんが演じる高校生の視点から描いているんです。どこか一貫しているポイントがあれば、多少展開がぶっ飛んでいても観客はついてきてくれる。もちろんホラー、アクション、コメディなどの要素を、それぞれどれぐらい盛り込むかのバランスは悩みましたが、ブレない要素を加えようと意識しました。

ーー3人の高校生役(木戸大聖、黒崎レイナ、上野凱)をはじめ、キャラクター設定で意識したことはありますか。

大前提として、本作品ではキャラクターの面白さやチャーミングさを強く出したかったんです。というのもアクションやホラーなどの強烈なシーンもあるなかで、青春要素を引き出すためには、高校生の存在感を強く出す必要がありました。

そのうえでコメディ要素も加えていくと、高校生役を演じる3人は、可愛げがあって能天気なイメージがぴったりだなと。例えば『クローズZERO』のようなゴリゴリのカッコ良いヤンキーというよりは、不良になりきれてないぐらいの“ちびっこヤンキー”ぐらいがちょうど良いなと。作品全体でも3人でわちゃわちゃと掛け合いしているシーンを多く撮ろうと決め、3人も可愛げやポップさがハマるようなイメージで采配しました。

話の展開もバンバン変わるし、演者としては難しい脚本だったと思うのですが、みんなばっちり演じてくれました。特に木戸くんは、1週間の撮影期間のうち、一度しかNGを出していないぐらいでした。

ーー逆に苦労したシーンはありますか?

予告編でもちらっと流れるのですが、バイクに乗っている3人が、口裂け女に追いかけられるシーンは時間がかかりました。演技どうこうとかの問題ではなく、とにかく手間がかかってしまいました。

撮影は、僕が車に乗って、前方から3人が追いかけられる様子を撮影しました。そうなると、まず僕が乗っている車と、バイクに乗っている3人と、屋敷紘子(口裂け女の演者)さんが走るスピードを揃えないといけない。その連携だけでも大変でしたね。屋敷さんに「もう少し遅く走れないか」とお願いしたら、「これ以上遅くすると動きがぎこちなくなる」など、兼ね合いが難しかったです。

しかも微調整するために声がけしたいのですが、走行しているとエンジン音で自分の声が届かないんですよ(苦笑)。なので、クラクションを鳴らしたらスタートするなどサインを事前に決めました。撮り終わった後に修正点を伝えに行くのも、物理的に距離があるので時間がかかったりして大変でした。観客は自然に観ているとは思うのですが、裏では地道な努力が積み重なっているんです(笑)。

ーーそれはお疲れ様でした。やはりヤンキー映画だからこそバイクシーンにはこだわりが?

やはりヤンキーものなので、バイクに乗るシーンはどうしても撮りたかったです。劇中で乗ってるのは原付なんですけど、木戸くんと黒崎さんと上野くんには実際にバイクに乗ってもらいました。リアリティを出すため半キャップで乗ってもらったり、移動した後のシーンで駐車したバイクを映したりと、こだわった点をあげるとキリがありません。

先ほども話したように、限られた撮影期間の中でバイクシーンを撮るのは労力がかかりますが、かといって徒歩で移動するのはダサいじゃないですか。僕自身もバイク好きですし、そこは譲れなかったですね。

ーー監督自身もバイクがお好きなんですね。

幼少期の頃から仮面ライダーなどの特撮モノもよく見ていたので、バイクには昔から憧れがありましたね。

あと僕は24歳の時に、映画の専門学校に通おうと広島から上京してきたんですけど、その時もバイクに乗ってきたぐらいなんです。片道700キロぐらいありましたね。通った専門学校もバイクで通いやすいからっていう理由で、バイクを最優先に考えるテキトーな人生でした(笑)。

ーーかなりワイルドなエピソードですね。ちなみに映画監督の道は24歳から志したのでしょうか。

中学生の時から自主映画は作っていたんです。まあ映画といっても、ジャッキー・チェンやブルース・リーの真似事のような、高いところから飛び降りたりするようなアクションをカメラに収めたものなんですけど。

それでも映画を撮るのは趣味で続けていて、20歳の時に一度デザイナーとして就職したんです。ただ夢を諦めきれず、24歳の時に上京して専門的に勉強しようと出てきました。

ーー専門学校で勉強したことが生かされている部分はありますか?

やはり実際の撮影現場を見学できたのは大きかったですね。入学時ですでに社会人の年代なんですけど、学生として好きな監督の手伝いをさせてもらったりして、そこで怒られながら演出や段取りを学べたのは収穫でした。それに学校の同期とかとも仲良かったので、みんなで自主映画を作ったり演じてもらったりと、映画祭にエントリーして、グランプリやら観客賞なんかを受賞できたのが純粋に思い出深いです。

今作は感慨深い作品ですね。中学時代に友達同士で高いところから飛び降りるシーンを撮っていた原体験から、専門学校で友人と経験を積んで、いまはプロのスタントや演者に指示しているわけですから。そう考えると『先生!口裂け女です!』は、自分の趣味やこれまでの軌跡が詰まった集大成と言っても過言じゃないですね。

観客にも、演者のファンだけどホラーは苦手という人もいると思うのですが、ぜひそういう層に観てもらいたいです。ホラー、アクション、青春、コメディと凝縮した作品なので、遠慮せず楽しんでもらえたら嬉しいです。

(取材・文=佐藤隼秀/ライター)

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