職場には年齢も性別もキャリアも異なる様々な人が集まる。会議で目上の人に堂々と意見を言うのは、人によっては勇気のいることだし、たとえ言わなければならない理由があったとしても、専門外のことに口を出すのは気が引けるものだ。
多様性が重視される今、立場や年齢、性別、キャリア関係なく安心して自分の意見を言える風土を作れるかどうかは、組織の生産性を左右する。いうまでもなく、風通しのいい職場の方が活気があり、アイデアも生まれ、それは売り上げや利益へとつながっていく。従業員にとってもそのほうが居心地のいい職場となる。「心理的安全性(メンバーがなんでも率直に言い合え、前向きに挑戦できる状態)」を確保することは組織にとっても従業員にとってもメリットがある。
自分の「気持ち」を伝えよう
職場の心理的安全性の作り方については様々な本が出ているが、基本的には組織や経営者、上司やリーダーの仕事とされていた。しかし、従業員一人ひとりも、自分の職場の心理的安全性を高めることができる。
『わたしからはじまる心理的安全性』(塩見康史、なかむらアサミ著、翔泳社刊)は、上司だけでなく部下の立場でも、心理的安全性を確保することができるとし、そのためにできることが解説されている。たとえば、自分が「感じた」ことをなんでも率直に話すことができるチームは生産性が高いとされている。感じたこととは何かを見せられた時の感想もそうだし、ひと仕事終えた時の感情や、同僚からかけられた言葉への気持ちもそう。
もしかしたら、職場で自分の感情を表現するのは照れくさかったり、子どもっぽいと思う人は多いかもしれない。ただ、大げさに感情表現をする必要はなく、「お客様に喜んでいただけてとても嬉しかったです」というように、少しだけ気持ちを添える話し方をするだけでいい。それが事務的な報告であったとしても、感情の表現が含まれていると血が通ったものになる。こうした積み重ねによって心理的安全性は築かれていくのだ。
長所はさりげなく、例を出して伝える
長所は生かし、短所は補い合うのがチームのあるべき姿だが、自分の長所は案外自分ではわからないもの。同僚から伝えられて初めて知る自分の長所もあるはずだ。
こうした長所を仕事上のコミュニケーションの中でさりげなく伝えることも、心理的安全性の構築に役立つ。その際は、「〇〇さんは鳴りっぱなしの他部署の電話なども取ってくれたり、すごく広く周囲を見てくれているよね。おかげで事務所全体の顧客対応のレベルが上がっていると思う」など、例を示しつつ、それがチームにどんないい影響をもたらしているかも併せてつたえるといい。もちろん、自他ともに長所を発見して磨いていくことはいい仕事をするうえでも大切なのは言うまでもない。あなたの長所も、同僚の長所もチームの武器なのだ。
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ここでとりあげたようなことは、経営陣や上司でなければできないことではない。誰もが明日からでもできることである。そして、これらは職場やチームの心理的安全性を確実に高めていく。
誰でも遠慮なく意見が言え、無駄な上下関係や格差がない組織は、経営陣や上司は会社やチームのために、部下は自分が気持ちよく仕事できるようにするために、つまり全員で作り上げていくもの。本書ではそのための実践的なアイデアが数多く紹介されている。もし自分の職場がぎすぎすして居心地が悪いなら、きっと本書を読めばその原因と対処法がわかるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。