中途採用に関しても、総務省の労働力調査によれば、完全失業率は4.0%(同)で41カ月連続の減少。厚生労働省の発表では有効求人倍率は0.98倍(同)、新規求人倍率は1.59倍(同)で、ともに前月と比較して微増となっています。
景気が回復基調であることは、景気動向指数からも明らかです。企業の採用意欲も増しており、体力が改善していることも間違いはないでしょう。
しかし、内定率が高いのは比較的偏差値の高い大学や一部の限られた有名大学のみであることは周知の事実です。都道府県によっても有効求人倍率は大きく異なります。大企業が多く集まる首都圏と、企業の少ない地方とでは大きな格差があることは、言うまでもありません。
また上記の調査方法がインターネットによるアンケートとありますが、ネット調査の弊害としてバイアスがかかりやすく、まんべんなく収集したデータではありませんから標本誤差が反映されていません。当然、結果自体に有意性もありません。
●企業の広告塔としての就職情報サイト
中途採用では仕事のキャリアが大きな要素になりますが、新卒採用は決め手となる要素を学歴に求めざるを得ません。
ところが企業は学歴偏重である事実を明らかにはしません。
企業にとって採用活動とは、優秀な新卒社員を採用する場であると同時に、企業のブランディングのためのマーケティング活動でもあるからです。特に、最終消費財といわれる一般消費者向け商品を扱っている企業にとっては、学生は選考対象であると同時に、大切な客です。
客である以上、企業にネガティブな印象を持たれては困りますから、イメージが壊れないように、不合格にしたとしてもファンであり続けてもらうための情報しか出しません。
例えば就職情報サイトは、採用する企業側で大学別にエントリー率を調整することが可能です。有名大学のエントリー率を高めておけば、必然的に有名大学の学生を中心とした母集団が形成されることになります。学校名不問のオープンエントリーをうたう企業も増えていますが、氏名、住所、電話番号、学科などの一部の情報から大学名を特定することも可能です。
さらに企業から学生に対して、適切な情報が提供されているとはいえません。採用情報の多くは「学生を吸引するために意図的に用意された情報」だからです。企業が用意する採用情報には、現在活躍をしているか将来を嘱望されている社員が登場します。広告と同じですから、その情報に客観性はありません。
就職情報サイトは、企業が掲載料を支払って登録し、その対価として学生を自社にエントリーするように誘導するメリットを受けられるサービスです。企業の実態を伝えることや、学生が欲している情報を伝えることを目的としているわけではありません。企業から対価をもらって広告を流しているにすぎず、企業と学生の健全なマッチングを取り持つサービスではありません。
●求められる要件は、人間関係構築力
学生も就活用に作成した実態とは異なるプロフィールを用意して、キャリアセンターで学んだことや、就活本に書かれた通りの就活テクニックを披露しますから、ますます適切なマッチングは難しくなります。