昨年12月1日、大手企業の新卒採用活動(15年春入社)が事実上解禁となり、就活が本格化してきた。今年の新卒採用の特徴としては、全体的な就活スケジュールに短縮化や、「学歴フィルター」といわれる企業の学歴選別の強まりなどが指摘されているが、そんな企業の新卒採用を支援する異色の学生ベンチャー企業が話題を呼んでいる。
その学生ベンチャーは、現在、東京大学大学院修士課程(2年生)で電子工学を専攻するA氏が昨年立ち上げ、新卒採用において一定の条件を満たす学生を求める企業と、学生をマッチングさせる事業をメインに手掛けている。
そんなA氏に、
「現在の新卒採用における問題点と実態」
「そうした問題点を解消させるクレスキの事業とは、具体的にどのようなものなのか?」
「多忙な理系大学院生が、なぜ起業に至ったのか?」
などについて聞いた。
―まず、多忙な理系大学院生の身でありながら起業した理由を教えてください。
A氏 起業への関心を持ったのは、大学3年生の冬にGMOインターネットでインターンを経験していた時でした。ベンチャー企業への投資部門に配属され、投資先の新会社設立を担当し、事業をつくるということを経験したところ、「ビジネスはおもしろい」と思うようになりました。さらに大学からの派遣、および個人旅行でシリコンバレーを訪問し、起業家、投資家、研究者に接する機会を与えられ、現地を回ったのですが、その時に出会ったITベンチャーの経営者たちはみなカッコよかった。自分らで何かを生み出す気概を強く感じました。この経験が起業のきっかけになりました。その後、大学4年生の夏にプログラミングコンテストに出場し、構築したコネクションから、業務系システムやデータベースの開発を依頼されるようになり、フリーランスのエンジニアとして仕事を始めたのです。大学院に進学する予定だったので、就職活動はしませんでした。
―フリーで仕事を始めるに当たり、現役東大院生というブランドはあったでしょうが、何かそのほかにセールスポイントを打ち出したりしましたか?
A氏 受注単価を同業他社と比較し激安価格に設定し、差別化しました。ただ学生の儲けとしては十分だったと思います。私が受注していた領域ではスキルの低いエンジニアでも月60万円は取っていて、平均すると月70万円程度が相場だったので、それよりも低く設定し、これを継続していくうちに若者が低価格でがんばっていると評価され、次々に業務を依頼されるようになりました。しかし、受託業務を続けるだけでは物足りません。自分で企画した商品やサービスをビジネスにしたいという思いが高まってきたのです。
そこで、2012年、大学院生1年生の夏に、インドのIT企業から日本人大学生を対象にしたインドでの研修プログラムの作成とマーケティングを依頼されました。高価格な研修プログラムでしたが、それまで持っていたマーケティングの知識を用いて受託開発よりも少ない時間でそれなりの利益を上げることができ、自分で事業をつくることは、やはり楽しいなとあらためて思いました。
―この時点ではまだ個人事業主だったわけですが、どのような経緯で法人化、つまり起業に至ったのですか?