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就活後ろ倒しで、学歴偏重が強まるワケ~学歴フィルターによる学生ふるい落としの実態

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「Thinkstock」より
 日本経済団体連合会(経団連)が、政府から要請のあった「採用選考活動の開始時期の後ろ倒し」の対応として、「採用選考に関する企業の倫理憲章」の見直しを決定しました。

 その結果、大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考に当たり、スケジュールが変更となります。

 企業の広報活動は、卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、選考期間は、卒業・修了年度の8月1日以降となり、前年度よりもさらに後ろ倒しのスケジュールが組まれたことになります。

出典:経団連HP

●学歴偏重に逆戻り

 今回の見直しによって就職・採用選考活動は、企業と学生の双方にとって短期集中型になります。短期集中型になると、選考に十分な時間がかけられないため、採用に当たっては学歴という指標が大きな採用基準になってくることは間違いありません。

 学歴を重視する理由としては、大手・有名企業に有名大学出身の学生が多いことからも容易に推測がつくかもしれませんが、大きく次の3つが影響していると思われます。

 (1)有名大学の学生を採用すれば、はずれが少ない。

 適性検査をやらせても有名大学の学生は高得点を取り、受験競争において勝ち残ってきた人材であることが評価されています。また相応の運も持ち合わせていなければ、有名大学への合格はできません。応募が殺到する大手・有名企業においては、採用の効率性からも学歴がフィルターになるという事情が存在します。

 (2)大手・有名企業には、学閥が存在することが多い。

 人間は相手との共感ポイントを探す性質があります。初対面の人に「出身はどちらですか?」「趣味はなんですか?」と尋ね、共通点を探して親しくなっていく経験は誰にでもあるでしょう。企業における共通点のひとつが学閥になります。学閥=採用実績校となるため、採用実績校ではない学生は事前にふるいにかけられてしまうことが少なくありません。

 (3)有名大学や採用実績校から学生を採用すれば、採用担当者の評価が上がる。

 採用担当者が「今年の採用はうまくいった」と上司に報告したとします。上司は「どこの大学の学生を何名採用できたのか」という報告を求めることでしょう。採用した学生が、有名大学や採用実績校でない場合は、仮に人物的に素晴らしい学生だったとしても、採用担当者は上司に評価をされないことがあります。

 また、新入社員が社内トラブルや早期離職などの問題を起こした場合、その社員が採用実績校出身でなかった場合、採用担当者が批判されることがあります。逆に採用実績校出身者だった場合、問題の所在を別のところに求められるので、採用担当者にとっては採用しようとする学生が採用実績校であることがリスクヘッジの重要なポイントになっている場合もあります。

●採用の本質を理解すること

 企業が「当社は、東京大学および早慶上智の学生以外は採用しません」と明言したら、学生をはじめ、それを聞いた人はどのように思うでしょうか。企業イメージが下がることは容易に想像できます。

 企業のテレビCMや新聞広告を見たことがあるでしょう。CMや広告は、企業が商品を消費者(お客様)に効果的に宣伝する機会です。大量にCM放映をすることによって、同じフレーズを繰り返し見聞きさせられるお茶の間の消費者は、無意識下にその商品のことが刷り込まれることになります。

 企業の採用活動の準備~告知期間にも、同じことがいえます。企業にとって、学生は採用対象者であると同時に、広報対象者である消費者でもあります。

 学生向けの企業説明会は、企業にとってCMや広告と同じ、いえ、それ以上の宣伝効果を得ることができます。ほとんどのテレビCMは15~30秒ですが、会社説明会は2時間程度が一般的です。就職活動をする学生は、企業が用意する場所にわざわざ足を運んで参加してくれます。その上、詳しく企業研究までしてくれるのです。会社説明会は、集まった学生に対して2時間も広告宣伝できるチャンスなのです。

 企業の採用活動は、消費者でもある就活学生に対する広報期間であり、この時期に学生に与えられる情報は「学生を吸引するために意図的に用意された情報」なのです。

●これから就職活動をする学生への提言

 企業規模や仕事内容にかかわらず、安定企業を希望する学生が近年増加しています。もしあなたが同じように安定企業を志望しているなら、次のように意識を変えてください。

 それは「大手就職サイト・就職情報誌に載っていない企業を探すこと」です。特に人気ランキングに掲載されているような知名度の高い企業では、応募者が殺到しますから倍率も高くなります。人気ランキングに載っていない優良企業もたくさんありますから、その中から自分に合った企業を探すことをお勧めします。

 上場企業(東証、名証、札証、福証)に区分される企業は、国内で約4000社あります。ところが、多くの学生が知っている企業は、人気ランキングに掲載されている100社ほどです。ぜひ多くの優良企業を見つけるようにしてください。

 また、現在人気ランキングに名を連ねている企業でも、景気の影響によっては業績を悪化させる可能性があります。今の時代は、確実に長い間安定する企業は存在しないと考えたほうが賢明です。逆に、一時的に業績が悪い企業に入ったとしても、社内に適材な人物がいなければ、若くしてマネジメント業務を任せられることもあるでしょう。そこで成果を上げれば、上位役職のポストにありついて昇進昇格する可能性が出てきます。そのようにして若くして高レベルな経験やスキルを身につけていれば、今度は転職マーケットで強みを発揮しますから、良いパスを描くことが可能になります。

 大切なことは、企業を選ぶときに、「点=いま」で選ばないことです。「線=将来性」の観点で見ていくと、今までとは違った基準や風景が見えてくると思います。
(文=尾藤克之)

●尾藤克之(びとう・かつゆき)
東京都出身。経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。人間の内面にフォーカスしたEQメソッド導入に定評。リスクマネジメント協会「正会員認定資格HCRM」、ツヴァイ「結婚EQ診断」監修等の実績。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)など多数。