「ターゲット」や「ニーズ」など、ビジネスでよく使う言葉。実は、このような言葉がビジネスの可能性を狭めてしまっている場合がある。知らぬ間に、悪影響を及ぼしかねない言葉を使ってしまっているのだ。
このような言葉を、本書『ビジネスを蝕む 思考停止ワード44』(博報堂ブランドデザイン/著、アスキー・メディアワークス/刊)では「思考停止ワード」と呼んでいる。安易に用いることで、知らず知らずのうちに思考が停止しがちになり、その結果、ビジネスにさまざまな悪影響を及ぼしかねない言葉だ。
本書では、企業に勤めるビジネスパーソン1000人を対象に「思考停止ワード」を調査し、「漢字系」「カタカナ・英字系」「ひらがな系」の3つのカテゴリに分け、44のワードを抽出。なぜその言葉がいけないのか、その理由とともに解決の手がかりを紹介する。
では、どのような言葉が思考停止ワードになるのか。それぞれのカテゴリから1つずつ紹介していく。
【ゆとり世代】
小中学校、高等学校で、いわゆる「ゆとり教育」を受けた世代。生年でいえば、おおよそ1987年から1994年。現在は大学生か社会人なら3、4年目までの若者を指す言葉である。
仕事をしてくれない。すぐにやめてしまう。「だからゆとり世代はダメなんだよ」といった声をよく聞くが、本当にゆとり世代と呼ばれる若者はダメなのか。「団魂の世代」にはじまり、「バブル世代」、「しらけ世代」、「ロスジェネレーション」と、当事者たちの意思とは無関係に呼び名がつけられ、上の世代から「最近の若者は…」と言われ続けてきたことを忘れがちだ。
つい小言を口にしてしまう人は、自分の若かった頃を棚に上げて、一方的に否定するという思考停止に陥っている可能性がある。自分が気にしている違和感が、単に世代ごとの価値観の変化によるものだということに気づいていないのだ。
【グローバル】
「地球全体の」あるいは「世界規模の」といった意味の言葉。「国境の概念をなくして、地球規模で事象をとらえる」というニュアンスを含むこともあるが、私たちが住んでいる地球全体を指し示してつかわれる言葉。「グローバル化」には2つの方針がある。
ひとつは、地域性にとらわれることなく、唯一の共通基準やコンセプト、ルールにしたがって、世界中でビジネスを展開するグロ―バル化。もうひとつは、世界各地の地域性や文化性といった多様性に配慮し、その国やその年に合ったやり方をしながら、世界中でビジネスを展開するグローバル化。
こうした事情を十分に理解しないまま、「グローバル化」を単純に「海外市場に出ること」だと受け止めてしまうと、思考はそこでストップしてしまうのだ。
【がんばれ】
「がんばれ」というのは、声をかける相手に対して、能力の発揮を期待している言葉だ。しかし、この「がんばれ」という言葉には、意外とネガティブな反応を示す人が少なくない。「ダメ出しされた気分になる。がんばっていないわけじゃないのだから」と現状の否定をともなっているのだ。
しかし、この言葉を口にする側は、おおよそポジティブな気持ちでいる。「がんばれ」という言葉が及ぼす影響に配慮できないのだ。なので、「がんばれ」ではない別の言葉をかけることで相手の心情に影響を与え、結果的に「がんばろう」という気持ちが、言葉をかけられた人の中におのずと沸き起こるように仕向けるしかないのだ。