この中でも、大人気ゲームである「モンスターハンター」は400時間プレイしたそうだ。その膨大なプレイ時間が「モンハン」をUSJに呼び寄せた一つの大きな要因になっていることは、誰もが想像できるはずだ。
家族には「これも仕事なんや!」と言って、映画やゲーム、アニメ、音楽などにどっぷりと浸かる。自らが従事する業界を知らずして、その業界の中で成功することはできない。森岡氏の研究熱心さもUSJの集客数増加につながったといえるだろう。
■アイデアが100%当たる人はいない
しかし、ただ研究熱心だけでは強いアイデアを生み出すことはできない。
生み出したアイデアを形に落とす、それも成功に近づくように適切な形にしてから世に出すことができなければ、人々に受け入れられることができないはずだ。本書の後半では、そのためのマーケティング手法が明かされている。
どんなアイデアでも、確実にそれが成功するとは限らない。できることは、「確率をあげること」だと森岡氏は述べている。強いアイデアをひらめく確率をあげて、より具体的に落として成功に結び付ける確率をあげるのだ。森岡氏は「アイデアの神様とは確率だ」とまで言い切っている。
では、強いアイデアを生み出す確率を高めるにはどうすればいいのだろうか。本書では「イノベーション・フレームワーク」と呼ばれ、以下の4つの技法から成るという。
(1)フレームワーク
(2)リアプライ
(3)ストック
(4)コミットメント
例えばこのうちの「フレームワーク」は、まずアイデアを考える前に「どのような条件を満たせばいいのか」「その条件を組み合わせて、どこに着眼点を定めて頭をフル回転するべきなのか」の2つが大事となる。つまり、「どこに宝が埋まっているか」を見定める力といえる。
また、「リアプライ」は宝探しの場所が定まり、どのように探すかを選ぶ上で大切な要素だ。「リアプライ(Reapply)」つまり、すでにあるやり方で成功しているものはないか探すのである。自分でアイデアを生み出すのは、最後の手段であり、まずは先行事例を探すことが大事なのだ。
残りの2つをはじめ、それぞれの詳しいやり方は『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』で丁寧に説明されているので、ぜひ参考にしてほしい。
本書を読んでいると、今後のUSJが楽しみになるし、否が応でも期待してしまうだろう。特に本書の中でも1章まるごと割いて魅力が語られている「The Wizarding World of Harry Potter」は、早く見てみたいという想いに駆られる。
USJファンだけでなく、マーケティングに携わる多くの人が参考にできる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。