毎日仕事が忙しくて集中力が続かない。残業続きで寝不足の上に体調も悪くなってきた…。この記事の筆者のように、できればラクしてゆるく仕事がしたいと思っている「お疲れさま」な社会人も多いはずだ。
でも、やっぱり上司や先輩の目がねえ…。
そう溜め息をつく前に、できることがあるはず。ちょっと見方や考え方を変えれば、意外と仕事に余裕ができるものだ。
インターネット上で人気のウェブサイト「デイリーポータルZ」の編集長である林雄司さんによる『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』(扶桑社/刊)は、仕事に余裕と活力を与えてくれる77のゆるいハック術を伝授してくれる、“ゆるビジネス書”である。
本書で紹介されているメソッドは、「えっ、こういう方法アリなんだ!」と、肩の力が抜けるものばかり。いくつか例をご紹介したい。
憂鬱なプレゼンは「モノマネ」で乗り切れ
まずは説明術から。会議であれ、プレゼンであれ、人前で話をするというのは、それだけで緊張するものだ。筆者も、プレッシャーで自分が何を話しているのか分からなくなってしまうことが悩みである。
そこで参考にしたいのが「プレゼンはモノマネして乗り切る」メソッド。林さんはプレゼンの際に、知り合いのラジオDJになったつもりで話しているそうだ。ラジオDJだけあって調子よく、ダジャレもスパッと口にする。聞いているほうは、おもしろかろうがそうでなかろうが、ノリがいいのでつい聞き入ってしまうという。
確かにこれは有効である。ラジオDJでなくても、例えば身近な存在、上司や先輩をコピーするのでもいいし、いきなりスティーブ・ジョブズを真似るのでもいい。もし失敗しても、「自分がやらかした」という感情を抑えられればいいのだ。
「いつでも機嫌よくいること」が究極のハック
人のイライラは伝染するもので、誰かがイライラ感を醸し出すと、周囲もピリピリし出して逆に集中できなくなる。特に上層部がイライラしているのは最悪だ。あなたも経験はないだろうか? 機嫌というのはみんなの仕事を左右するのだ。
林さんの仕事は発想勝負のウェブメディアをフィールドとしているが、アイデアを考えるときの最大の要素は「機嫌よくいること」だと言う。アイデアを生み出すネタ探しは、外に出て町をウロウロすることが大事だ。本屋に行って最新情報をながめたり、タクシーや美容院の店員と話してみたり、意外とネタはたくさん落ちている。そこで「面白がれるかどうか」がアイデアになるかどうかのカギになるのだ。
面白がるには機嫌がいいことが大事だ。イライラしていたり、鬱々としていたり、オドオドしていたりしても、何も生まれない。いつでも機嫌よくいよう。
どうでもいいことを「資料」としてまとめてみよう
この本の巻末には、付録として林さんがつくったパワーポイントによるプレゼンの資料や、プレスリリースが載っている。そのテーマがやたらとおかしい。
「ペリーがパワポで提案書を持ってきたら」
「耳なし芳一をパワポにする」
「大政奉還のプレスリリースを書く」
「カフカ『変身』をネット通販風に書く」etc…
「ペリーがパワポで提案書を持ってきたら」は、ペリーによる日本への開国提案書という形で自国の実績や通商条約締結の提案、開国のスキーム、さらにはマイルストーンまで説明されていて、とても面白い。
これはビジネススキルの無駄遣いではなく、一つのクリエイティブだ。こうしたスキルは型を身につけることが大事だが、自分で楽しく練習することで、スキルの型も身につけられて、さらにクリエイティブも発揮できる。まさに一石二鳥である。
本書は“ゆるビジネス書”を自称しているだけあり、頑張らなくても仕事が進むようになるメソッドが満載だ。ここで紹介したメソッドの他にも、人への催促の仕方、企画会議のやり方、インターネット上の処世術など、仕事をする上での基礎的なことが、ゆるい文体で書かれていて、若手からベテランまで、どんな人でも読みやすいと感じるはず。
そういえば、仕事を楽しんでいるように見える人はいつでも機嫌がいいし、考えていることにユーモアがあって、ほめ言葉もバリエーション豊か。林さんが言っていることと同じだ。
最近生活が干からびているかも…と悩んでいる社会人の皆さんは、ゆるーいビジネス書で、仕事に潤いを与えてみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。