ブラック居酒屋に搾取される従業員?経営者目線を押しつけ、美辞麗句でダマす
少々昔の話になるが、今年1月14日放映のテレビ番組『クローズアップ現代』(NHK)にて居酒屋甲子園の様子がネガティブなニュアンスで取り上げられ、インターネット上で話題になっていた。
後追い記事も多数目にしたが、概ね番組の姿勢に賛同するもので、「宗教的なやりがい搾取だ」「違和感通り越して戦慄を覚えた」といったネガティブな意見が多かったようだ。確かにそんな面があることは否定できないが、かといって「居酒屋甲子園」ばかり非難するのもアンフェアと感じた。いくつかの切り口からみていこう。
そもそも居酒屋甲子園とは、外食産業の活性化を目的に2006年から毎年1回開催されているイベントである。全国からエントリーした居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が自店の想いや取り組みをプレゼンテーションし、日本一を決めるというものだ。8回目となった昨年大会には全国から約1400店舗が参加し、5000人以上の来場者があった。
ちなみに同番組では決勝スピーチの様子が放送されたのだが、料理の味や接客技術を競うのではなく、「感動」や「笑顔」「仲間」「感謝」といったポジティブなキーワードで彩られた「居酒屋で働く夢や希望を語る」プレゼンテーションを評価するものであり、スピーチの様子を仲間の店員たちが涙ぐみながら応援している様子が「カルト的」といった印象を持たれてしまったようだ。
【放送したNHKの問題】
居酒屋甲子園運営側のコメントによると、当初NHK側から取材の申し込みがあった際に伝えられていた取材趣旨と、実際の報道内容が大きく異なっていたとのことだ。取材された側の主張が伝わることなく、一方的に批判的な報道がなされたのであれば問題である。
<NHKからの取材依頼文>
いま日本社会のさまざまな現場で生まれている広告、条例、企業の社訓・クレド(信条)などの「熱い言葉」の現場を訪ね、その背景にあるものを探る特集を組みたいと考えております。そのなかで、従業員の離職率の高さに悩むサービス業界で、いま○○甲子園という大会が広がっていること、さらに各店舗さんの企業理念や個人理念でも詩的な言葉を導入されている様子を取材しております。低温世代といわれる若者たちのこころをどう動かすか、その取り組みの様子を取材しております。
<居酒屋甲子園側からの反論>
若者をごまかすための言葉遊び(「ポエムの力で説明放棄」「何かを隠蔽する」等々)であるような報道がありました。このような報道になったことは誠に残念であります。