日本代表に選出されている内田篤人選手や長谷部誠選手など、多くの日本人選手が活躍しているドイツのブンデスリーガ。2013-14年シーズンは、バイエルン・ミュンヘンが前シーズンからの無敗記録を継続し首位を独走、リーグ史上最速優勝を果たした。終盤は勢いが失速し、連覇のかかったチャンピオンズ・リーグでは、準決勝でレアル・マドリードに敗れたものの、リーグ優勝までのその強さは圧倒的だった。そんなバイエルン・ミュンヘンの監督を2013年から務めているのがジョゼップ・グアルディオラ監督だ。
現役時代はFCバルセロナなどで中心選手として活躍、引退後はFCバルセロナの監督に就任して、メッシ選手やイニエスタ選手といった世界屈指の選手たちを率いて史上最強ともいわれたチームをつくり上げた。
本書『大切なことはみんなピッチで教わった』(アレックス・マルティン/著、金子一雄 /翻訳、飛鳥新社/刊)は、そんなグアルディオラ監督から学ぶことができる多くの教訓を紹介する一冊。原著は2012年に“El efecto Guardiola”というタイトルで刊行されている。
公の場での会見や選手に対するミーティングなど、グアルディオラ監督が聴衆に伝えるメッセージは、常に明確で説得力があり、人を惹きつける魅力がある。
2011年9月8日、カタルーニャ議会名誉勲章を受章したその日、グアルディオラ監督は各界の名士が集まる式典で、10分間のスピーチを行った。
「私は情熱を持って仕事を行ってきた。ただそれだけなのです。お手本になるつもりはいつだってありません。それに友人とのつきあいを大事にしていきたい。それだけです」
自分自身のことは謙虚に話し、場にふさわしい話も持ち出している。
「もしもだれもが毎朝早く起き、不平不満や言いわけは口にせず、仕事に大いに精を出すならば、私たちの国は限りなく発展するはずです」
人々の努力と団結と連帯を訴える、とても印象深いひと言が、そのスピーチを締めくくった。これは、すでに彼の魅力を知っていた市民たちをさらに魅了したのだ。
本書ではグアルディオラ監督も実践しているというスピーチ上手になるための秘訣もいくつか紹介している。
・伝えたいメッセージが聞き手に完璧に届くよう、簡潔明瞭で一貫性のある話を十分に練り上げる。
・テーマに関連のない話題や専門外の問題には立ち入らない。
・気どった表現や決まり文句は避ける。
・外見にも配慮を怠らない。その場にふさわしい服装や小物を選ぶ。
リーダーを務める人は、多くの人々の前に立ち、自らの信念や理想を明確に伝える技術を備えていなくてはならない。
グアルディオラ監督も選手たちを言葉で鼓舞し、試合に送り出して、チームはいい結果を残し続けている。そんなスピーチの技術は、サッカーだけではなく、仕事やあらゆる場面で役に立つものであるはずだ。
(新刊JP編集部)
関連記事
・「人格者ではない人もいる」高校野球監督の実態
・映画監督が疑問を呈する“コミュニケーションのあり方”
・「iPad」がバレーボールで重宝されたワケ
・カンヌから見る、現在のフランス映画とは
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。