「リブセンス」「シーラカンス食堂」に学ぶ、雇われない生き方
社長を務めるリブセンス(「同社HP」より)
11年12月期の売上高は11億3400万円、営業利益3400万円ながら、12年9月13日時点での株式の時価総額は238億円もある。市場での評価も高い。
村上氏はメディアでも有名になったが、無名ながら地方都市にも志を掲げて雇われない生き方を目指す若者が誕生している。
兵庫県中南部に位置する「そろばん」の日本有数の産地・小野市で、大学を出たばかりの3人の若者が、大企業に就職せず、起業した。11年3月に設立した会社名は合同会社「シーラカンス食堂」。風変わりな名称の会社は、食堂ではない。主な仕事は、デザインスタジオの運営で、地場産業とデザインを融合させていくことを活動の主眼に置いている。
中心人物は代表社員(社長)を務める小林新也氏(25)。大阪芸術大でデザインを学び、在学中から独立を意識し、企業と連携して繊維素材を使って「枯山水」をつくり芸術祭に出展するなどの活動を展開してきた。
デザイン力で地域活性化
実家は小野市内の表具店。近くの商店街はシャッターの下りた店舗が目立ち、さびれている。「デザインの力を使って地域の活性化に貢献したい」と思い、卒業後、すぐに故郷で起業の準備に入った。実家の2階の物置を改装して、事務所として活用している。「若い今しかできないこともあります」と小林氏は話す。
中学校時代の陸上部の1年後輩の、松尾圭亮氏(名古屋大経済学部卒)と吉岡直哉氏(甲南大経営学部卒)も合流した。主に営業や経理などの仕事で小林氏を支えている。資本金250万円は3人で出し合った。
「これから大企業に入っても、どうなるかわかりません。自分に投資するような仕事がしたいと思っていました」と松尾氏。社名の「シーラカンス」は古代ギリシャ語で、「からっぽ&脊椎」を意味するという。からっぽのところに若い力で何かを埋め込み、次世代に何かを繋ぐ骨のような存在でありたいとの思いから命名した。
すでに実績もある。閉鎖したそろばん工場からそろばんの珠を譲り受け、玩具やマッサージ器などを商品化したほか、島根県の石州瓦メーカーと協力して、瓦を使った食器開発をプロデュースした。小野市商店街内の休憩所をおしゃれなカフェに改装し、一部をそこに展示している。
戦略商品と位置づけるのが、東レと連携して今年6月に新発売した商品だ。インナー素材を活用してつくった座り心地がよいソファーやカバン、ペンケースだ。ブランド名は「SKINTEX」。小林氏は「社運がかかったプロジェクト。これが売れれば3人で食っていけるめどが立ち、社員も新規に雇うことができるかもしれません」と語る。
大企業でも定年までの雇用は保証されない