■「今日の100円は明日の100円より価値がある」
「今日の100円は明日の100円より価値がある」。これはファイナンスで最も重要な格言で、「将来受け取る予定のお金は現地点より価値が下がる」という意味だ。
「金利」という言葉を聞くと多くの人がポジティブに反応するだろう。例えば銀行の定額預金が金利1%だった場合、100円を預ければ、1年後には101円になる。だから私たちは1円分得をしたと思うはずだ。
しかし、裏を返せば、100円の価値は1年後、99円の価値になっている。下記は金利10%の世界での計算となる。
今日 5年後
100円 → 161円
62円 ← 100円
金利10%の世界では、5年後の100円は、今日では62円になる。基準は「今日」だ。お金の価値は、今日が最も高いと考えなければならない。
もし、家賃25万円のマンションである場合、年間300万円のキャッシュフローがある。このとき、金利が6%であった場合(この6%という数字も著者の根拠がある)、今日の100円は1年後106円に増える。逆に考えると、1年後の100円は、現時点で約94円になる。したがって年間300万円のキャッシュフローについて、1年後の300万円は現在283万円、2年後は267万円になる。そして、年間300万円の家賃が30年間続くとして、このマンションの価値を算出すると、4,129万円にまで割り引かれることになる。9,000万円ではなく、4,129万円がマンションの価値になるのだ。
遠い将来のキャッシュフローは大きく割り引かれてしまう。年間300万円で貸したとして、その期間が100年でも5000万円には届かないのだ。
金利はDCF法において、キャッシュフローの不確実性(リスク)の度合いによってきめられる。リスクが高いキャッシュフローには高い割引率(金利)、リスクの低いキャッシュフローには低い割引率が適用されるという。
お金の価値は時間によって変化をする。これはキャッシュフローを考える上での基本的な部分になる。本書では投資の価値がどのようにキャッシュフローから決まるのか、キャッシュフローの価値が時間によってどのような影響を受けるのかを説明するために不動産の例を扱っており、極めて実践的な内容となっている。
このほかにも第二章では、マンションの割引率や、利回りが高くなる物件の特徴、一等地で売られるコーヒーの値段の高さなどについて触れている。読み応えのある章になっているので一読してみてほしい。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。