なぜ日本のメーカーが束になっても、ジョブズ一人に勝てないのか?
3.一言でどういう商売をやりたいのかということを書けないとダメ!
グーグルの「1クリックですべての情報にアクセスする」のように、シンプルな言葉で何をやりたいのかといったことを表現できるまで考え尽くすことが大切。今はネットで、気合と根性があれば大体誰にでも会えてしまうので、意見を聞いてみたい人に「面白いことを考えたので10分だけ時間をください」といった時に、一言で伝わるかどうかがその後を決めるといってもいいだろう。これは企業内でも一緒で、社内でもデキル人は、結局このワンメッセージを作ることがうまい。上司に一言で「こういったことを考えているので、こういうアクションを起こしてください」ということが言えるかどうかで随分と違ってくる。
4.事業を始める時には絞り込むこと。
事業の柱は何本もいらない。起業すると7〜8割の時間は雑用。雑務が多い中で複数の柱をこなすことはできない。例えば、文房具や備品を買うこともしなくてはならない。事業コンセプトや経営戦略を考えるような時間は、ほとんどないといっていい。だから、起業する時に絞り込むことが必要だ。
5.何かを代替するサービスは起業しやすい
人に新しい行動を起こさせるのは大変だ。だから、すでに生活の中でそうすることが当たり前となっているものを、より簡単にしてあげるとか、まったく今までにはなかった方法でそれを解決してあげるなど、何かを代替するサービスであれば、人はスムーズにそのサービスを採用するようになる。よくネットで特殊な機能をつけて便利になるところにお金を払っていただく、ということで起業するケースがあるが、そういう事業は、あまり将来性が見込めないのではないか。
6.出口はいくらなのかを意識しておくべき
シリコンバレーで必ず質問されるのは、「あなたの会社はどんな会社ですか? いくらなら売りますか?」ということ。投資家・株主は、企業価値を10倍から30倍くらいにはしてほしいという期待がある。なぜかというと、リスク・リターンの問題で、銀行融資は融資した金額が返って利息もつくというローリスクローリターンなのだが、株式の場合はゼロになる場合もあるが期待リターンも高い。だから、起業したら常にどのような状態になったら畳むのか、売却するのかなど、事業の出口戦略を意識していくべきなのだ。
7.スタートアップは、海賊と同じ。
スタートアップは海賊と同じで、仲間を募って、大海原に出ていって、難破してしまえばしょうがないし、お宝持ち帰ったら山分けだぜ、という認識であるべき。だから、その船に投資する投資家の期待リターンというのも、とても大きいということを意識しておくべき。また、潜在的な競合他社をきちんと知っていくことで、いざとなった時はその競合が自社を買ってくれるという選択肢を残しておく周到さも必要だろう。
【プレゼンテーション後に行われた、参加者との討論会】
――似たようなサービスが出てきた時に、どうするべきでしょうか?
上村康太副社長(右)。
塩野氏 価値を進化させていくという方法があります。お客さまにとって何が評価されているのかで、最近ではOtoO(ネットからリアルの店舗への送客等)がありますが、例えば、リアル店舗の従業員教育であったり、そのビジネスの最もクリティカルな部分について気づいているかどうか、そこが本質的な問題を解決できるものになっているかどうかが価値になります。その価値提案を、どんどん続けていくことだと思います。