NEW
ソマリア沖周辺海域で発生する、海賊・海上武装強盗の余波

日本人でも鉄砲が持てる法律も!? 海賊頻発で民間警備会社に要望の声

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

post_2002.jpg
海賊に制圧される中国の船。(「Wikipedia」より)
Mass Communication Specialist 2nd Class Jason R. Zalasky
 日本では、銃器を携帯・使用できるのは、警察や自衛隊など限られた「公務員」に制限されている。そんな銃器の携帯・使用が「民間人」にも認められることになるかもしれない。

 その背景にあるのは、アフリカ・ソマリア沖周辺海域で発生する海賊・海上武装強盗だ。国際商工会議所の国際海事局が2012年1月に発表した統計をもとにして、国土交通省が集計した報告書によれば、11年に世界で発生した海賊等の事案は439件。このうちソマリア沖周辺海域で発生したものが237件となっている。また、近年では、西アフリカの海賊被害も増加している。日本関係の船舶の被害は世界で11件、このうちマラッカ海峡を中心とする東南アジア周辺海域が9件と最も多い。

 ソマリア沖には、アメリカ、イギリス等が海軍等の艦船を派遣しており、日本も09年から海上自衛隊の護衛艦2隻を派遣している。さらに、海賊の逮捕・取り調べなどの司法警察業務を行うため、この護衛艦には海上保安官8名が乗船している。

 こうした取り組みが功を奏し、12年のソマリア沖周辺海域での海賊等の発生件数は減少傾向にある。件数は減少しているとはいえ、ソマリア周辺海域の海賊は発生海域が広域化している。さらにロケット砲など重火器で武装し、船員を人質に取り、身代金を要求する事案が多い。

 日本関係船舶でも、12年にインド洋(オマーン沖)で航行中に海賊に乗り込まれるという事案が発生した。この時には、船員が籠城設備に退避している間に、この海域に展開しているアメリカ海軍が海賊を拘束した。拘束された海賊4人は海上保安庁に引き渡され、日本に移送された。海賊対処法違反で裁判が行われ、4人のうち2人は13年2月に懲役10年の実刑判決、犯行当時16歳だった1人には懲役5年から9年の不定期刑の判決が出た。

 こうした状況下で、海運業界から要望されているのが、民間の武装警備員の日本籍船への乗船だ。しかし、日本籍船では国内法が適用され、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)により、銃砲・刀剣の所持が禁止されているなど、民間の武装警備員が乗船することはできない。このため、日本経済団体連合会や日本船主協会は政府に対して、自衛隊員や海上保安庁職員の乗船による警備の強化を提言・要望している。また、海事振興連盟(会長:衛藤征士郎衆議院議員)は、「日本籍船への武装ガード解禁実現」を要望している。

 現在、イギリス、ギリシャ、リベリア等の国では、民間武装警備員を乗船させることを可能としている。日本関係の船舶でも使用している船会社は多い。事実、11年に海賊等の襲撃を受けた商船のうち、武装警備員が配置されていた船は海賊等をすべて撃退しており、その有効性が確認されている。さらに、武装警備員の乗船がない場合には、荷主から契約を解除される場合もある。

 日本では、海事局長が「尖閣諸島の問題などもあり、海保の船を出せるかというと、そういう状況にはない」と、公的武装警備の実現性が低くなっていることを指摘している。このため、政府は民間武装警備員の乗船を可能とするための関連法案の提出を目指している。

 その骨子は、国民生活に不可欠な物資で輸入に依存せざるを得ないものの輸送に関する船舶については、海賊行為による被害を防止するために行う警備について、民間の武装警備員の導入を認めるというもの。武装警備員は小銃などの所持を可能とし、海賊行為のおそれのあるものの接近および船舶内への侵入を制止するためやむを得ない場合には小銃の使用を可能とする。

 実際に民間武装警備を行うのは、民間の警備会社よりも民間軍事会社となる可能性が高い。民間軍事会社の規制については、08年9月にスイス政府と赤十字国際委員会が中心となって「モントルー文書」を策定しており、すでに44カ国とEU(欧州連合)がこれを承認しているが、日本は承認を行っていない。