日本のアニメ・マンガやゲームなどのジャパンカルチャーは海外のユーザーからも愛され、ファンが多い。では、世界各国のオタクカルチャー事情はどんな状況なのか。そんな疑問に答えてくれるのが平成元年生まれのオタク女子4人組「劇団雌猫」が世界の同志のリアルを徹底調査する『海外オタ女子事情』(劇団雌猫著、KADOKAWA刊)だ。
海賊版が跋扈していたのは昔の話? 中国のアニメ事情
中国は日本のアニメやマンガを愛する人が特に多い国のひとつだ。過去には海賊版が氾濫していたイメージもあるが、今は日本をしのぐ「アニメ大国」になりつつある。
中華圏の日本オタク文化は長い歴史を持つ。1980年に『鉄腕アトム』が放映されて以降、『一休さん』『ドラえもん』『SLAM DUNK』『新世紀エヴァンゲリオン』といった人気作品が次々と輸入されている。中国の古参のオタクはテレビアニメを通じて日本のコンテンツに興味を持ったケースが多いという。
しかし2000年代以降、大陸においては外国産のアニメへの制限がかかるようになった。そのため、2000年代はインターネットで違法アップロードのアニメを観る人も少なくない状況になった。ただ、2011年以降、アニメやマンガの正式配信が多く行われるようになった結果、海賊版は駆逐対象となり、正規版にきちんとお金を払うことがあるべきオタクの姿という価値観が支配的になっているという。また、中国産のソーシャルゲームのオタク人口は若者を中心に爆発的に伸び、『アズールレーン』『荒野行動』『陰陽師』など、日本でも中国発のソーシャルゲームが多く人気を博している。
中国のオタク文化の状況が変わったのは、2011年以降、時代背景として3つの特徴がある。まずは、大手動画サイトがきちんとしたライセンス契約を結び、日本のアニメの配信を始めるというコンテンツ正視化の動き。次に、ソーシャルゲームなどの自国のコンテンツ産業の成長。そして最後に、端末の変化がある。
現代ではモバイル機器を通じてコンテンツに触れる人が増えている。中国でも同様でスマートフォンの操作や投稿への文字数制限の結果、「来週のアニメを観るまで生きよう」というオタクにはお決まりのフレーズを「周指活」(ヂョウヂーフォ)というようなさまざまな略語が新たに生まれている。こうして観ることができるコンテンツが増え、遊べるコンテンツが増え、情報源が増えた結果、中華圏のオタクは増加し、多趣味化も進んでいるのだ。
中国の他にも、アメリカ、ヨーロッパでのオタク文化を紹介している本書。コンテンツへの熱意や敬意など、世界のオタクたちと共感できるところも多いはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。