NEW

歴史ある巨大ホテル、ホテルニューオータニの運営の裏側と、優秀なホテルマンの条件

【この記事のキーワード】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


 宿泊予約は今のようにインターネットのない時代ですから、ほとんどが電話応対でしたが、連日満室という状況でしたから電話が鳴りやまない。休む暇もなく、何時間もしゃべり続けるわけです。本当に大変な仕事でしたが、言葉遣いやコミュニケーションの取り方という面では、すごく貴重な経験をしました。例えば、ホテル側の応対に怒って電話をしてくるお客さまもいらっしゃるので、そういう場合にはどういう受け答えをすればお客さまの気持ちを静められ、穏やかな気持ちでお話ができるかなど、電話でのコミュニケーションについてはすごく勉強になりました。

 ストレスで胃を痛めるほどの業務を2年近く続け、やっと後輩もでき、これからもっと頑張ろうと思っていた時、突然「明日からスーツを着て外回りに行け」と言われました。それが1992年で、宿泊営業部に異動になりました。

●ホテル業界の厳しい競争

--再び希望とは違うセクションへの異動ですが、仕事が嫌になるということはありませんでしたか?

今井 その時もまだコンシェルジュを目指してはいたのですが、一方でホテルにはコンシェルジュ以外にもさまざまな仕事があることを知り、それに仕事というものの楽しさ、おもしろさも少しずつわかってきた時でもありました。ですので、仕事が嫌になるということはありませんでした。当時は女性を外回りの営業に起用しようという社会的な風潮があり、ホテルニューオータニでもそういう風潮に従おうとして、「今井なら体力的にも精神的にも大丈夫そうだから」という判断だったのではないでしょうか。女性で営業になったのは、ホテルニューオータニでは2人目だったと思います。そして、その後14年間、外回りの営業をしました。

--ホテルの営業というのは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

今井 宿泊営業と料飲営業の2つの部門があり、それぞれに、例えば大使館担当、外資系企業担当、国内企業担当というように、お客さまごとに課が分かれています。営業は料飲部門だけで100人近くいますが、そのうちの40人くらいが婚礼を担当しています。ホテルニューオータニには宴会場が34ありますが、その稼働率を高めるために、企業や大使館を訪問して、宴会場の利用をお願いするわけです。私は、宿泊営業で大使館以外のすべてを担当しました。1990年代前半まではホテルの規模や立地である程度のすみ分けをしていましたが、多くの外資系ホテルが東京に開業した1990年代後半からは、かなり競争が厳しくなってきました。

--他のホテルに競り勝つ決め手というのは、やはり価格になるのでしょうか?

今井 価格は大きな要因の1つではありますけれども、お客さまのご利用されたい条件にもよると思います。例えば500人規模の宿泊であればホテルニューオータニのような規模の大きなホテルしか対応できないでしょうけれども、50人規模くらいだと対応できるホテルがぐんと増えるので競合になりますしね。また、ホテルというのは結構立地が影響します。ちょっと距離があってもホテルニューオータニを利用していただいていた新宿エリアの大企業が、新宿に新しいホテルが開業したことで、そちらのホテルを利用されるようになったということなどは実際にあります。

 ほかにもいろいろな要因がありますが、私は人のつながり、人の縁というのもかなり重要な要因ではないかと思っています。例えば、ある企業が創業何周年というような宴会をされる時には社運をかけてやるので、信頼できる営業担当者のホテルでなければ任せられません。

 実際、人のつながりという意味では、印象的な出来事があります。担当していたある外資系企業の日本支社長が急死されるということがありました。そういう場合、ホテルの営業は「お別れ会をしませんか」というセールスに行くのですが、企業側としては、それまで見ず知らずだった人間に突然セールスに来られても迷惑という場合もあります。

 亡くなられた支社長の秘書の方に後で聞いたのですが、自分の上司が亡くなって落ち込んでいるところに、まさにたくさんのホテルからそういうセールスが来て、とても傷ついたそうです。私はその秘書の方をよく知っていたので、「何かお役に立てることがあったら、なんでも言ってください」という内容のメールを出しただけにとどめていたのですが、のちに「ぜひともお別れ会はホテルニューオータニでお願いします」とご依頼をいただきました。そういう人のつながりというのは、とても大事だと思いました。

歴史ある巨大ホテル、ホテルニューオータニの運営の裏側と、優秀なホテルマンの条件のページです。ビジネスジャーナルは、企業・業界、ホテルの最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!