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カジノ解禁の問題点、改めて整理~誘致合戦過熱で自治体に巨額損害、社会問題の恐れも

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「Thinkstock」より
 超党派の国会議員による国際観光産業振興議員連盟(IR議連=通称・カジノ議連)が、カジノ解禁推進法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)を、議員立法で12月3日に国会に提出した。同法案は、来年1月からの通常国会で審議される。

 世間では、あたかもこの法案が通りさえすれば、日本でカジノが実現するかのように思われているが、大きな誤解である。この法案は、単にカジノ解禁という政策目標実現に向けた、ごく粗いスケジュールと、ごく基本的な骨格だけを示したものにすぎない。カジノ解禁のための手段、すなわち、どのような制度設計でカジノを解禁するのかという具体的な内容は、今回の法案にはほとんど規定されていない。例えば、どのような考え方に基づき、どのような区域であればカジノを設置してもよいとするのか、という選定基準や評価要素も、カジノを解禁した場合に想定される負の影響への具体的手当ても、一切規定されていない。カジノ解禁の具体的な制度設計は、1年以内をめどとして別に立案されるカジノ解禁実施法(特定複合観光施設区域整備法)においてなされることになっている。

 現状のカジノ解禁推進法案のみを前提とすると、「賭博に関連する公正な社会秩序」(カジノ解禁の実質的な正当化根拠)を確保できるかどうかはまったく不透明であり、白紙委任に近い状態で、カジノを解禁するという結論だけを先に決めることになりかねない。たとえるなら、具体的な内容の契約書もなく、どのような構造やデザインの建物が建つかわからないのに、先に高いお金を払って、とにかく巨大な建築物を業者(国)に発注するような状態である。

 このように、法案は多くの問題を抱えているが、今回は、法律専門家として、カジノをめぐる各地での住民や自治体を巻き込んだ住民訴訟が多発する恐れという観点から検証したい。

●住民訴訟とは

 住民訴訟とは、地方公共団体の住民が、自己の属する地方公共団体の「財務会計上の行為」を適正に保つために地方自治法で認められた制度である。違法な財務会計行為によって自治体が被った損害・損失の補填のため、住民が執行機関としての知事や市長などに損害賠償を求める訴訟が典型例である。住民訴訟は、住民であれば誰でも、自己の個人的な利益とはかかわりなく、監査請求を経て、単独で行うことができる。ここでいう「住民」は、外国人も法人(企業)も含む。しかも、裁判所に納める手数料は、いくら高額の損害賠償を請求しようとも、一律1万3000円だけですむ。

 なぜ、住民訴訟が多発する恐れがあるのか。それは、カジノ誘致をめぐって、自治体が極めて多額の費用を支出することになるにもかかわらず、準拠すべき基準がカジノ解禁推進法案に一切規定されていないからである。そこを、カジノ反対派に住民訴訟で突かれる可能性が高い。カジノ解禁推進法案は、我が国で初めて民営賭博を合法化しようとするものであるが、この種の立法について、万人の賛成を得られることはありえない。法案が可決したとしても、反対派は絶対になくならない。住民でありさえすれば、誰でも、わずか1万3000円の手数料で、住民訴訟を提起できるのである。さらにいえば、カジノによって客を奪われることを危惧する近隣の事業者(例えば、パチンコ業者や、カジノがある複合観光施設に入れなかったホテル業者)が、種々の影響を狙って、住民訴訟の提起を後押しすることも考えられなくはない。このような自治体にとっての重大リスクを、以下具体的に説明したい。

●誘致をめぐる死闘~ほとんどの自治体は負ける

 カジノ解禁推進法案では、自治体の申請に基づき国が認定した区域(特定複合観光施設区域)において、国の許可を得た民間事業者がカジノの設置及び運営を行うという建て付けになっている。少なくとも当初は、極めて限定された区域においてのみカジノ施行が認められる方針である。よって、カジノ施設誘致を目指す自治体間の競争は、必然的に熾烈なものとなる。カジノ解禁推進法成立後1年以内を目途とするカジノ解禁実施法の成立を待って、その時点から動き始めるというのでは、その自治体が認定レースを勝ち抜くことはほぼ不可能である。

 従って、カジノ解禁推進法案には、カジノ設置区域の選定基準や評価要素は一切規定されていないにもかかわらず、同法案が成立すれば、自治体によるカジノ施設誘致合戦が一気に加熱することとなる。既に全国で20か所以上の自治体や団体がカジノ誘致に手を挙げているが、最終的には、ほとんどの自治体が認定レースに負けることになる。