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TPP交渉の裏で、各国首脳が相次ぎ「がん」…根強い米国工作活動説、甘利大臣も被害か

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●がんは秘密兵器?

 そして、今回、経済系オンラインメディアをウォッチしていて一番紹介したかったのが、「東洋経済オンライン」だ。同サイトはスタンフォード大学大学院への留学経験をまとめた『米国製エリートは本当にすごいのか?』(東洋経済新報社)の著書もある編集部員・佐々木紀彦氏を編集長に起用し、12年11月にコンセプトを「新世代のリーダーのためのビジネスサイト」とし、20~30代の最先端のビジネスパーソンをターゲットに絞った大リニューアルが成功し、13年3月には5301万PV(ページビュー)となり、経済誌系サイトでは第1位だ。独自配信記事が多く、編集スタンスがはっきりと出ているのが特徴だ。フランス在住の投資家、ムーギー・キムによる連載「グローバルエリートは見た!」を単行本化した『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(同)も売れ行きが好調だ。

 同サイトにおいてTPPに関する記事で注目すべきは『インテリジェンスから見た、がん秘密兵器説 甘利大臣はTPP交渉中、なぜ舞台を去ったのか』だ。原田武夫 ・原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役が13年12月16日に寄稿したものだが、甘利明TPP担当大臣が12月5日、記者会見で自らが「早期の舌がん」であることを発表し、2週間ほどの入院治療を行った。

 日米間で大詰めを迎えているTPPをめぐる交渉の「激務によるがん」と考えた向きも多いだろうが、このニュースを聞いた原田氏は、「またか」「できすぎた話だ」と思ったという。「米欧の『グローバル・エリート』たちは、グローバル・マクロ(国際的な資金循環)を廻し続け、それによって金融資本主義を維持しようとしている。当然、その行く手を遮るものが突如として現れることは、ままあることだ。『非公然活動』の中に“都合の悪い相手国の政治家をがんにしてしまう”という工作活動が含まれていることは、実のところ、インテリジェンス【編註:政治的レベルでの情報・諜報】の世界では『常識中の常識』になっているのだ」として、12年2月27日付の英系有力紙「ガーディアン」の「がんは秘密兵器か?」という記事を紹介している。

●がん秘密兵器説は陰謀論か

「中南米ではここに来て余りにも多くの指導者たち(下記)が『がん』に罹患し、多くの場合、命まで落としている。これはあまりにも不自然である。

 ネストル・キルチュネル アルゼンチン大統領…結腸がん
 ジルマ・ルセフ ブラジル大統領…リンパ腫がん
 ルイズ・イナチオ・ルラ・ダ・シルヴァ ブラジル大統領…喉頭がん
 フィデル・カストロ キューバ国家評議会議長…胃がん
 エヴォ・モラレス ボリヴィア大統領…鼻がん
 フェルナンド・ルゴ パラグアイ大統領…リンパ腫がん」

 また“反米の闘士”として知られ、13年3月6日に心臓発作で死去したヴェネズエラのチャヴェス大統領もカストロ・キューバ国家評議会議長から、かねてからこう言われていたという。

「チャヴェス、気をつけたまえ。彼ら(米国)は技術を開発済みだ。貴方はとても不注意だ。食べる物、そして彼らが貴方に差し出す食べ物に気をつけなさい……ほんの小さな針で彼らは貴方が何も知らない間に刺すのだ」

「『米国が――その他の国々もだが――、そのインテリジェンス機関(工作機関)を用いて“都合の悪い外国人リーダー”をがんや別の病気に罹患させ、この世から消してしまう』という情報は、国際世論においては決して珍しくはないのである。率直に言うと、この問題について我が国の大手メディアは、一切口をつぐんでいる。その代わりにこうした“グローバル・スタンダード”の議論をすると、やれ『陰謀論』だと十把一絡げにし、真実を明らかにしようとはして来なかったのである」と原田氏は主張する。

 確かに外交関係の本を読めば読むほど、陰謀論だけで片付けにくいのも事実。

 例えば、元外務省・国際情報局長の孫崎享氏が書いた12年のベストセラー『戦後史の正体』(創元社)で、1993年に誕生した細川護熙連立政権が、「日米安全保障」よりも自主路線を選択したが、アメリカからの圧力に屈した一連の流れの記述がある。その自主路線を打ち出した防衛問題懇談会の実質的な責任者であった西廣整輝元防衛次官、畠山蕃防衛次官は94年4月に細川内閣が瓦解した後、畠山氏は95年6月に58歳で、西廣氏は95年12月に65歳で、相次いでがんによって死亡したという。

 真偽のほどはともかく、こうしたがん秘密兵器説は、流布すればするほど、アメリカへの恐怖感を植えつけさせるに十分だろう。交渉は激務であるため、という解釈もできるし、「都合の悪い外国人リーダー」という存在に甘利大臣があてはまるのかどうかはわからないが、紙媒体では扱いにくい、こうした視点も出てくるのがオンラインメディアの面白さだろう。

 世界は「ワクワクする」だけでなく「ゾクゾクする」一面もあるのだ。
(文=松井克明/CFP)