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トヨタ、兄弟車政策復活?経営改善策によるクルマの没個性化、長期的販売力低下の懸念も

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トヨタ自動車本社(「Wikipedia」より
/Chris 73)
 トヨタ自動車は1月20日、ミニバンの「ヴォクシー」と「ノア」を全面改良版の発売を開始した。6年半ぶりのフルモデルチェンジで、同クラスで初めてモーター出力が強い「ストロングタイプ」のハイブリッド車(HV)を扱う。燃費(JC08モード)は23.8km/リットルとなり、日産「セレナ」(16.0km/リットル)、ホンダ「ステップワゴン」(15.0km/リットル)を凌駕する。事前の受注も3万台と販売計画を4倍近く上回っており、今年第1弾の新型導入としては上々の滑り出しに見える。ただ、この「ヴォクシー」「ノア」について、クルマ好きの間ではあまり嬉しくない情報が流れている。「“兄弟車政策”が実質的に復活するのではないか」というものだ。

 トヨタは今回の「ヴォクシー」「ノア」の開発に合わせて、同モデルをベースにした兄弟車をさらにもう1車種、用意しているらしい。「ヴォクシー」はネッツ店、「ノア」はカローラ店で販売しているが、兄弟車はトヨタ店とトヨペット店への導入を検討中とのこと。その代わり、「マークXジオ」「エスティマ」「アイシス」などの販売が打ち切られる模様だ。そして今回の話は「ヴォクシー」「ノア」シリーズだけにとどまらず、トヨタとしての全体的な商品や国内販売戦略に沿った動きという。

 トヨタは現在、「いいクルマ」づくりを推進するためのモノづくり改革「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」に取り組んでいる。ユーザーの目につく部分は差別化し、目に見えない部分は部品の共通化を徹底する--つまり、商品力の向上とコスト低減の両立を図ることが主なコンセプトだ。多様化する市場や顧客の好みに応えつつ“豊作貧乏”に陥らないよう開発から調達、生産体制を変えていこうとする試みだ。企業として生き残りを賭けた体質改革であることは確かだが、株主ならいざ知らず、消費者にとっては「その結果、どんなクルマが出てくるか」が大きな関心事だろう。

 TNGAを全面採用した新型車が出てくるのは2015年以降だが、業界関係者は「『ヴォクシー』『ノア』シリーズの併売はTNGAコンセプトの“はしり”ではないか」と見る。つまり兄弟車政策だ。

 兄弟車政策とは、内外装や装備をわずかに変えたクルマを別のネーミングで売り出すことで、「マークⅡ/クレスタ/チェイサー」「ターセル/コルサ」などのようにトヨタもかつて多用した。大型高級車を頂点としたヒエラルキーが健在で、かつ市場が右肩上がりで拡大した時代は機能したが、消費者の目が肥えた今は通用しにくく、ディーラーにとっても値引きや中古車販売などで競合するなどメリットは少ない。実際、日産や本田技研工業(ホンダ)など同業他社がチャネル統廃合を進めたのも、チャネルごとに専売車種を供給する非効率さを改善することが動機の一つだった。

●問われる多チャネル販売の意義

 しかし、国内市場で唯一「レクサス」「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」の5チャネルを維持し続けるトヨタは、メーカーとしての供給責任を果たさなくてはならない。一方で国内の需要は少子高齢化などでジワジワ減り続け、専売車種をチャネルごとに供給し続けるのは難しくなりつつある。そこで、TNGAによる実質的な兄弟車政策の復活というわけだ。

 もちろん、単にエンブレムやランプの意匠を変えた以前のような兄弟車ではないかもしれない。しかし、販売店関係者は「販売量の少ないユニークな車種が終了となる代わり、細部のデザインや仕様を変更したクルマが増えてくるだろう」と予想する。別の販売店関係者も「今後は各系列の販売店でコンパクトカーもSUV(スポーツ用多目的車)も似たようなクルマを扱うことになるのではないか」と心配し「顧客から『似たようなクルマなのに、わざわざ(レクサスを除く)4系列違う看板を掲げている意味があるのか?」と顧客から思われてしまうことも不安だ」と付け加えた。すでに「プリウス」を全チャネル販売とした“前科”もある。