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揺れるHOYA 海外への課税逃れに強まる国税の監視と、創業家一族の反乱

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株主総会の決議報告を掲載するHOYAのHP
「このあたりは食事をするところが少ないので、そろそろ質問を打ち切りたい」

 光学機器メーカーの名門、HOYAが6月18日に東京・西新宿で開いた株主総会での、議長を務めた鈴木洋代表執行役・最高経営責任者(CEO)による発言である。昼食を理由に株主総会の審議を打ち切ろうとするという前代未聞の事態に、さすがに株主から抗議の声が上がり、引き続き3人ほどの質問を受け付けた。

 HOYAの株主総会は「創業一族の反乱」が毎年恒例となっている。創業者の孫である山中裕氏が、「株主無視の経営が続いたことに警鐘を鳴らす」として株主提案を繰り返してきたからだ。同社の前身である東洋光学硝子製造所を創業したのは山中正一氏、山中茂氏の兄弟。茂氏が病に倒れると、茂氏の娘婿である鈴木哲夫氏がトップに就いた。「小さな池(市場)の大きな魚(マーケットシェア)」を合い言葉にクリスタルガラスなどの事業基盤を築き、HOYAの中興の祖と呼ばれた。

 代表執行役を務める鈴木洋氏は哲夫氏の長男。株主提案をしてきた裕氏は茂氏の孫で米投資銀行のパートナー(共同経営者)を務める金融のプロ。2人は従兄弟同士だ。

 2010年6月の株主総会で裕氏が株主提案をしたのが皮切りとなり、会社側が株主提案を一切、招集通知と参考書類に記載しなかったとして裕氏側が提訴。株主提案権の侵害が司法の場で争われたことは過去に例がない。東京地裁は株主提案の議題を招集通知に全文掲載するように命じ、東京高裁も会社側の抗告を棄却し、敗訴が確定した。

 今年の株主総会では裕氏側の「HOYA企業統治正常化委員会」の株主が17の株主提案を提出。株主提案は招集通知に全文が掲載された。株主提案はすべて否決されたが、定款を一部変更して「役員報酬の個別開示」を求める議案には44.69%、「取締役会議長と最高経営責任者の分離」には40.76%の賛成票が寄せられた。

●東京国税局が申告漏れを指摘

 CEOの洋氏は12年12月にシンガポールに移住し、「課税逃れ」と物議をかもした。個人の所得税は日本では最大40%取られるが、シンガポールは最高税率が20%で、住民税はない。日本では最高税率50%の相続税や贈与税もない。株主に問われて洋氏は「(日本での)住民税は1円も払っていない」と答えたという。

 多国籍企業の課税逃れに厳しく対処している東京国税局は13年6月、HOYAに対し200億円の申告漏れを指摘した。海外子会社に利益を移し替えて本国での課税逃れを防ぐ「移転価格税制」を適用した。HOYAの前門の虎はコーポレートカバナンス問題を追及する創業一族、後門の狼は課税逃れに目を光らせる国税当局という図式だ。洋氏が標榜するグローバルな先進経営にチェック機能が働いているのかが、問われている。
(文=編集部)