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混合診療拡大でどうなる?勝者は誰?約15年にわたる推進派・慎重派の攻防と、米国の影

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厚生労働省が所在する中央合同庁舎5号館(「Wikipedia」より/BlackRiver)
 公的な医療保険が利用できる保険診療と、利用できない保険外診療を併用する混合診療を拡大する「患者申出療養制度」(仮称)が、2016年度をメドに創設される見通しとなった。混合診療の拡大は安倍政権の成長戦略に盛り込まれる。

 安倍首相の諮問機関、規制改革会議が3月に示した「選択療養制度」は患者と医師の合意があれば混合診療を幅広く認めるという内容だった。厚生労働省は「安全性が担保されない」と難色を示し、日本医師会も「国民皆保険が揺るぎかねない」と強く反発した。調整の結果、患者が希望した治療法について、実施の前例がないケースでは、専門家の合議機関が安全性を認めない限り、混合診療の対象にはしないことが明記された。混合診療の拡大を規制緩和の柱に据えながらも、慎重派に配慮し、決着が図られた。

 混合診療の拡大に反対していた日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の3団体の代表者は6月13日、記者会見を行い、「患者申出療養制度」を容認する姿勢を示した。日本医師会の横倉義武会長は「安全性について最低限の担保がなされた」ことを、容認した理由に挙げた。

 混合診療をめぐり日本医師会は、安倍政権と1年以上にわたって攻防を繰り広げてきた。新制度に対しては「攻防の末に生まれた妥協の産物」と評価する声もある。「こんなんじゃだめだ。患者のニーズに合わない」。政府の調整がヤマ場を迎えた5月、安倍晋三首相はこう述べ、制度の拡大を指示した。原案は混合診療が受けられる医療機関を京大病院、慶應病院など国内15カ所の臨床研究中核病院に限定していたが、患者のニーズを重視し、対象を大幅に拡大するように求めた。

 日本医師会が混合診療に猛反対してきたのは、高度の医療を提供できる病院とそうでない病院との間に格差が生じ、病院の経営が難しくなると考えたからだ。そのため、対象をどこまで広げるかが焦点になった。患者が希望した治療法について、実施の前例のないケースは国が審査することで安全性を担保し、中核病院で診療を実施する。副作用の強い薬を複数組み合わせるリスクの高い治療法は、中核病院などのある程度の規模と設備が整っている病院に限定する。一時は、混合診療を実施する医療機関が大幅に拡大される見通しも浮上したが、最終的には47都道府県の大学病院にとどまるため、一般病院の経営にはほとんど影響がない。

 安倍政権は混合診療を47都道府県に拡大したことで「名」を取り、日本医師会は混合診療を大学病院に事実上限定したことで「実」を取った。「実」を取った日本医師会にしてみれば、新制度は名ばかりで現行制度の延長にすぎず、振り上げた拳を下ろしたのだ。

●米国の影

 混合診療の拡大をめぐっては、過去約15年にわたり推進派と慎重派の間で攻防が繰り広げられてきたが、推進派の背後には米国の影がちらつく。

 1993年、当日の宮澤喜一首相とクリントン米大統領の首脳会談で、日米双方が年1回、「年次改革要望書」という外交文書を交換することで合意した。同要望書には農業、流通、金融、投資、医療、情報通信などの個別産業のほか、規制緩和や行政改革、独占禁止法と公正取引委員会、入札制度や業界慣行などが網羅され、日本の産業、経済、行政から司法に至るまで、そのすべてを対象に実にさまざまな要求が列挙されていた。