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チッソ、子会社株式売却で「水俣病被害者の救済は近く終了」 被害者団体は猛反発

編集部
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チッソ、子会社株式売却で「水俣病被害者の救済は近く終了」 被害者団体は猛反発の画像1本店が入居する中之島ダイビル(「Wikipedia」より/Inoue-hiro)
 戦後の高度成長期に水俣病を引き起こしたことで知られるチッソの株主総会が6月27日、大阪市北区のホテルで開かれた。総会後、メディアの取材に応じた森田美智男社長は、子会社JNCの株式売却と上場について「時間や売却額を見通せる状況ではない。環境大臣から許可をいただけるように努力していく」と語った。

 一方、総会が開かれたホテルの前では、被害者団体「水俣病不知火患者会」が株式売却に反対する街頭集会を開いたという。

 なぜ、水俣病被害者団体がチッソの子会社株式売却に抗議しているのか。それを理解するために、ここに至るまでの経緯を整理してみよう。

  2010年12月15日、議員立法「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」(特措法)に基づき環境相は、チッソの事業再編計画を認可した。11年1月12日、チッソは子会社JNCを設立。JNCはチッソから液晶製造などの事業の譲渡を受け、同年4月1日、営業を開始した。JNCの資本金は311億5000万円で、チッソが100%出資し、社長はチッソの森田社長が兼務している。

 チッソの事業再編計画によると、JNCグループは毎年度250億円(12年3月期)から280億円(15年3月期)の連結経常利益を計上し、その中から毎年度80億円程度の配当金を株主であるチッソに支払う。当面、チッソはこの配当金を原資として水俣病関連の補償と公的借入金の返済を行う。チッソは、将来的には環境相の承認を得てJNCの株式を売却し、売却代金で公的資金へ返済するとともに、補償業務を引き継ぐ法人「水俣病被害者救済支援財団」に賦課金を納付する。

 チッソの事業はJNCに移管し、チッソ本体は水俣病の補償業務に専念する組織体になった。チッソの14年3月期の連結売上高は前期比14.2%増の2288億円、最終損益は15億円の黒字(13年同期は166億円の赤字)に転換したが、それはJNCの業績が好転したことによる。

●子会社株式を売却して、本体は事業清算か?

 ところが、改正会社法の成立によって事態は急展開することとなった。

 改正会社法は4月25日に衆院本会議で、6月20日に参院本会議で可決成立したが、同法の成立に際し、子会社株式を売却する際に株主総会で議決権の3分の2以上の特別決議を義務付ける新たな規定について、チッソを対象から除外する特例が盛り込まれた。

 これは、特措法の成立に携わった議員が「チッソを改正会社法の適用対象から外さなければ、JNC株式の売却は環境相と親会社の株主総会の二重の承認が必要になるため株式の売却は遅れ、特措法の主旨が損なわれる」として、チッソを外す修正案を出したことによる。

 5月1日、熊本県水俣市で開かれた水俣病犠牲者慰霊式に出席した森田社長は式後、記者団にこう語った。

「被害者の救済は近く終了する。市況も良くなっている。上場の条件は整ってきており、できるだけ早い時期に態勢を整えたい」と、JNCの早期の株式上場を目指す考えを示した。

 子会社の株式を売却しやすくする特例を盛り込んだ改正会社法が成立したことを受けて、チッソは子会社の上場へと経営のカジを切った。JNCを上場させた後は本体を清算するもくろみだろう。チッソの経営陣は、一日も早く水俣病のくびきから抜け出したいのだ。

 現在、水俣病と認定されている被害者は800人以上いる。水俣病被害者団体は、衆議院で出された修正案が「チッソの事業清算の促進につながる。水俣病の幕引きを図ろうとするものだ」として、猛反発した。

 環境相は果たしてJNCの株式上場を承認するのか。チッソは、いつJNCの上場を申請するのか。JNC株式の行方が、水俣病問題の最大の争点になりつつある。
(文=編集部)

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