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大手繊維、なぜ社長交代相次ぐ?多角化と脱繊維の成果が鮮明 新主力事業育成を加速

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ユニチカ大阪本社が所在する大阪センタービル(「Wikipedia」より/Pediaman55)
 昨年度決算では大手企業の業績回復が目立ったが、それを機に社長交代が行われた企業も多かった。特に大手繊維各社は今年、帝人、東洋紡、旭化成、クラボウ、日東紡、ユニチカの経営トップがそろって交代した。繊維各社は早くから多角化に取り組んできた結果、脱繊維が進んだが、その成果の濃淡が業績に明確に表れている。

●業績回復をメドに経営体制刷新

 化学繊維発祥の旭化成は住宅事業が好調。14年3月期の当期利益は1012億円と1000億円の大台に乗せ、好業績を背景に藤原健嗣氏から子会社、旭化成ファーマの社長を務めていた浅野敏雄氏へ社長が交代した。今回の人事で権限を浅野社長に集中。藤原氏は取締役を辞任し、会長にとどまる伊藤一郎氏は代表権を返上した。旭化成は会長を務めてきた山口信夫氏が長らく社内で大きな影響力を持ち、2010年9月に85歳で亡くなるまでの18年間、4人の社長を決めてきた。伊藤氏と藤原氏は傍流の医薬品部門を歩いてきた浅野氏を抜擢することで「一度社長に就いたら死ぬまでトップに君臨する社風と決別する」というメッセージを発信した。

 綿紡績発祥の東洋紡は増収増益で、坂元龍三氏(現会長)から楢原誠慈氏へ社長が交代した。坂元氏は祖業である衣料繊維からの脱却を進める一方、繊維で培った技術をもとに工業用フィルムや医薬品など成長分野を強化した。12年10月には商号を東洋紡績から東洋紡に変更し、脱繊維路線を明確化した。楢原氏は九州電力からの転職組で、経営企画室長として社内の抵抗を押し切り、繊維部門の縮小を進めてきた。グローバル化推進本部長を兼務し、遅れていた海外事業の旗振り役を務めてきた。

 化学繊維発祥の帝人は13年度決算で最終損益が黒字に転換。大八木成男(現会長)から鈴木純氏に社長が交代した。社外の有識者などで構成し、社長の後継人事について助言するアドバイザリー・ボードが全員一致で鈴木氏を社長に推薦。鈴木氏は医療畑を歩んできた。素材、ヘルスケア、IT(情報技術)の3つの領域を組み合わせた新規事業で構造改革を進める。

 綿紡績発祥のクラボウは北条工場(愛媛県)の閉鎖など構造改革にメドがついたことから、井上晶博氏(現会長)から藤田晴哉氏に社長が交代した。

 綿紡績発祥の日東紡は南園克己氏(現会長)から白鳥克忠氏に社長が交代。白鳥氏は日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)からの転身組だ。日東紡はガラス繊維を用いた産業資材では世界有数だが、頭打ちが続く。

●不振のユニチカは引責辞任

 かつて3大紡績の1つに数えられたユニチカは、安江健治氏(現相談役)から注連(しめ)浩行氏に社長が交代した。繊維事業の不振などで15年3月期の最終損益が370億円の赤字となり、160億円の債務超過に陥る見通しになったため、経営体制を刷新した。円安効果で業績好転が相次いだ製造業の社長交代としては珍しく、事実上の引責辞任とみられている。繊維事業の撤退・集約など、構造改革が遅れたことが響いた。