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福留憲治「とあるマーケ・コンサルの日記」(Vol.1)

日本企業、なぜ新興国市場で苦戦?ブランド確立と最適な商品開発を阻む内部要因

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タイの首都バンコク(「Thinkstock」より)

●日本企業に共通する問題


 日本の大手企業、特にメーカーは、ほぼすべての企業が「グローバル企業」と呼ぶべき状況となりました。マーケティング分野のコンサルタントである筆者のクライアント企業のメーカーのほとんどが、売り上げ構成に占める海外比率は70%以上です。

 現在、日本企業の多くは成長率の高い新興国市場へ注力する姿勢を見せています。中でもアジアは、リーマンショック直後は中国への関心度が高かったものの、その成長スピードが鈍化し政治的リスクも高まる中で、今では東南アジア市場への注目度が高まっています。しかし、その東南アジアで事業を展開する日本企業が数多く存在する一方、すでに大きな実績を上げているケースは少ないのが現状です。

 その理由としては、もちろん将来的な経済成長への期待の高まりと実際の市場拡大のタイムラグが挙げられます。しかしそれだけではなく、コンサルティングの現場においては新興国市場における日本企業特有の問題が共通して存在するように思われます。今回は「日本企業における海外販社の位置付けが、新興国市場での展開において足かせになっている」という、日本企業の多くに共通する課題の一つについて考えていきます

●「後進国が先進国に展開する際に適した体制」で海外展開する日本企業


 タイやベトナム、インドネシア、マレーシアなど成長著しい東南アジアの新興国。そこでは、日本やアジア、欧米の企業が相次いで多くの分野に参入しており、世界中の企業が多様な商品を展開する百花繚乱の市場となっています。そのような中で日本企業には共通して、特に欧米企業と比べると特徴的ないくつかの課題が存在します。その課題のうちの一つ目は、特に大手メーカーの場合、海外展開をする際の組織体制のつくり方が、海外の「販売会社」として設計されていることによって生まれた課題です。日本企業では、現地法人が有する機能、管理範囲、投入される人材、本社から評価される内容などすべてが、販売会社として設計されているのです。

 その背景をたどると、1970年代の高度経済成長期から続く企業組織のつくり方に遡ります。高度成長時代、後進国だった日本は工業力を向上させ、品質を向上させて、工業製品を欧米などの先進国市場で大量に販売し、自社の売り上げを拡大することが重要視されました。その際、当初は後進国の物価の安さを活用した価格的優位性を背景にして、可能な限り大量に商品を販売することが求められました。

 そして生産数量が多くなるに従い、日本企業は生産ノウハウを蓄積し、高品質の商品を効率的に大量生産することで、「壊れにくい、安定した良い品質」の商品を低価格で販売し、先進国におけるシェア拡大を追求していきました。生産量が増えれば、原材料の購入量も多くなり、原材料価格を他社よりも低く抑えられるようになり、さらに競争優位性を強めていくことができました。そして、そこで得た利益を技術的な開発に注力することで、先進的商品を開発できるようになっていったのです。これは、当時の日本企業の典型的な成功のパターンでした。