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日銀、消費増税による深刻な課題克服に向け追加金融緩和か 無責任な素人審議委員は一掃せよ

田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授
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日銀、消費増税による深刻な課題克服に向け追加金融緩和か 無責任な素人審議委員は一掃せよの画像1日本銀行本店(「Wikipedia」より/Wiiii)
 2月5日、衆参両院がそれぞれ開いた議院運営委員会理事会で、3月25日に日本銀行政策委員会審議委員の任期を迎える宮尾龍蔵氏の後任として、原田泰・早稲田大学教授を政府側は提示した。原田氏は最近著『日本を救ったリフレ派経済学』(日経プレミアシリーズ)の書名でも明らかなように、いわゆるリフレ派の代表的論客として知られている。

 リフレ派とは、主に金融政策によってデフレ(物価の継続的下落)から脱却し、経済を安定化させる低インフレ状態への移行を主張している人たちを指している。現在の日銀の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁はリフレ派として知られている。実際に現在日銀の金融政策の方向性は、インフレ目標政策や積極的な量的緩和などリフレ政策のメニューそのものである。安倍晋三政権もまた発足当初から、アベノミクス3本の矢のひとつとして、このリフレ政策を最重要視していた。原田氏の人選には、政府・日銀のリフレ政策をさらに推進するというメッセージが込められている。

 日銀の金融政策は、月に1~2回行われる政策決定会合でその内容が決まる。判断に関わるのは、総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)の計9名である。インフレ目標の維持や量的緩和などの金融政策は、このメンバーによる多数決で決められている。

 原田氏が審議委員に選ばれれば、この政策決定会合に及ぼす「政治力学的な意味」は重要である。例えば、日銀は昨年の10月末に追加緩和の決定を行った。そのとき追加緩和に賛成したのは5名(正副総裁、白井・宮尾両審議委員)であり、ぎりぎりの過半数であった。この追加緩和は、原油安や消費増税によってデフレ脱却に黄色信号が点灯したことを受けての判断であり、リフレ政策の維持のために必要なものだった。

 しかしその票決の差がぎりぎりだったことは、リフレ政策そして安倍政権の経済政策の維持にも深刻な課題を突き付けたといっていい。そのため任期を迎える宮尾委員の後任にいったい誰を選出するのか、市場関係者のみならず多くの人たちが注目していた。

依然として消費増税の悪影響残る

  日本経済をみてみると、依然として消費増税の悪影響が残っている。インフレ率をみればぎりぎりプラスの水準を維持している状態である。市場の予想インフレ率をみると、ここ最近は底打ちした様相だが、先行きには不確実性が多い。黒田総裁も最近の記者会見の中で、年内のインフレ目標2%の実現が困難であると事実上認めるかのようなメッセージを出してもいる。

 筆者の私見では、年内の早い時期にさらなる金融緩和を行う必要がある。そのためには政策決定会合で、リフレ政策を支持するメンバーが安定的に過半数を占めることが決定的に重要である。その意味で原田氏選出の意義はきわめて大きい。

 また5月末には森本宜久審議委員が任期を迎える。森本委員は東京電力取締役を経験した、いわゆる「財界枠」での選出だった。森本委員はリフレ政策には消極的な立場を取る。

政策後進国・日本の象徴

 ところで日本の政策後進国ぶりの象徴でもあるが、金融政策についての見識がない人物でも、「財界枠」「学者枠」「女性枠」などで選ばれてしまうのが日銀審議委員の慣例だった。まったくバカバカしいかぎりである。過去にも、委員に任命されてから「金融政策については知らないので、これから勉強します」と記者会見などで語っていた人はかなりいた。驚くべき無責任な体質であった。

 そのため本田悦朗内閣官房参与などは従来から、金融政策の専門的な知見をきちんと持っている人物を選ぶべきだと主張していた。当然のことなのだが、このような意見が出てきたのは、やはり安倍政権と黒田日銀体制が誕生した副産物だろう。

 原田氏が委員に選出され、さらに森本氏の後任にも「財界枠」などにとらわれず、金融政策、しかもリフレ政策に理解のある委員を選出することが、日本の金融政策の見通しをしっかりさせる上でも最重要である。

 さらに、原田氏選出の意義はまだある。それは現在の黒田総裁や岩田副総裁の任期が切れた後も政策決定に関与できるからだ。このことは今後選出されるすべての委員にもいえる。つまり、リフレ政策が現体制を超えて存続することが可能になる最初の一歩にもなるのである。これは日本の経済の歩みを確かにするためにも、実に重要なことである。
(文=田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授)

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