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小笠原泰「生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業」

先祖返りするパナソニック、世界に背を向け「内向き」鮮明か 過去の成功体験への回帰

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パナソニック本社(「Wikipedia」より/Pokarin)
 本連載の2月7日付前回記事『本流社長・V字回復パナソニック=勝ち組、傍流社長・不振深刻ソニー=負け組、は正しいか』で、ソニーパナソニックの組織改革、組織マネジメント、組織体質などについて論じたので、今回と次回は両社の事業展開についての論考を行いたい。

 ソニーは2月4日、2015年3月期連結決算見通しで、営業損益が従来の赤字予想から一転して200億円の黒字になると発表した。これを受けて株価は11年3月以来となる3000円台まで回復し、時価総額は3.59兆円と、3.20兆円のパナソニックを1年半ぶりに逆転した。よって、「ソニーは負け組、パナソニックは勝ち組」という単純な構図ではもはやないと受け止められるかもしれない。

 しかし、ときに過剰期待をもって反応するのが株式市場であり、投資先を無理にでも探さなければならない世界的な超金融緩和の状況を考えると、この時価総額の逆転をもってこの構図は崩れたと断ずるのも表層的であり、早計ともいえる。

 今回は、「企業の脱皮」という革新を起こせる可能性はどちらが高いかについて考えてみたい。

 まず、両社の事業を見てみよう。パナソニックは赤字部門の見直しとして家電事業を整理する一方で、軸足を旧松下電工の事業ドメインである住宅関連事業と、津賀一宏社長が事業部門のトップを最初に務めたカーエレクトロニクス部門を核とする自動車関連事業というBtoB事業へと大きくシフトした。これが、今回の津賀改革の中での大きな評価ポイントであろう。特に、本家の屋台骨であったデジタル家電を切り、旧松下電工の住宅関連事業へとシフトするのは、本家が分家の養子になったようなものであり、保守的なパナソニックとしては、相当な決断といえよう。ちなみに、同社はテレビをはじめとするデジタル・AVC関連機器を切り捨てたが、白物家電はベースロードビジネスとして残すのではないかと筆者は考えている。

 しかし、事業の将来性と強みを見てみると、まず、ベースロードとしての白物家電と住宅関連事業に強みはあるが、その将来性はどうだろうか。どちらも基本的には国内市場を向いた事業であり、今後急速に進む人口減少と超高齢化、中間層の衰退、日本社会全体の貧困化を踏まえると、国内市場は急速に縮小していかざるを得ないであろう。日本での住宅事業も例外ではなく、右肩下がりになるのは免れないであろう。14年4月の消費増税前に発生した駆け込み需要の反動もあるが、同年は89.2万戸と90万戸を切っている。

●自動車関連事業の将来性


 もう一方の自動車関連事業について見てみよう。売上高1兆円を超える同事業は、大きく分けて3つの分野からなる。一つはカーナビを主力とする快適分野、車載電池を主とする環境分野、そしてセンサーなど先進運転支援システムが主力の安全分野である。この中で、半分の売り上げを占めるのが快適分野である。18年の売上高計画では、事業部全体の売上高を2兆円とし、うち快適分野の売り上げを8800億円とするなど順調に伸びるとしている。しかし同市場は、自動車のネットワーク化が進めば、グーグルなどのICT(情報通信技術)をてことした異業種企業によって代替えされる可能性の最も高い分野であろう。もはや、ハードの時代ではない。