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○人抜き…「まさか」の抜擢社長人事、なぜ相次ぐ?社内では裏事情や思惑も交錯

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安永竜夫・三井物産社長(「同社HP」より)
 今春の大企業社長人事の報道では、「〇人抜き」の文字が目立つ。取締役を経験せずに執行役員から飛び級でトップに就くケースも目立つ。抜擢のキーワードは「海外経験」で、50歳代が多い。世界のリーディングカンパニーは厳しい国際競争にさらされており、順送りの人選より、海外子会社の経営層からも評価されるような実力や人脈を持った幹部がトップに就任する必要が強まっている。海外経験がトップの必須条件になったともいえる。

三井物産の安永竜夫社長(54)


 4月1日付で三井物産社長に就任した安永竜夫氏は32人抜きだ。取締役の経験はなく、執行役員からいきなり旧財閥系商社のトップに就いた。社内外から「まさか」という声が上がった。なぜなら安永氏は、社長レースの下馬評にも挙がったことはなかったからだ。安永氏は海外経験が豊富だ。同社で初めて世界銀行へ出向するなど、幅広い海外人脈が強み。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEO(最高経営責任者)とも親交がある。

 これまで従事した主な業務は、エネルギープラントの輸出。露サハリン2のLNG(液化天然ガス)プロジェクトでは、1990年に米国三井物産ヒューストン支店に出向した初期と、2003年のFID(最終投資決定)のタイミングで2度にわたって携わった経験を持つ。

 事前の下馬評では、エネルギー畑の加藤広之専務や化学品畑の本坊吉博専務が本命とみられていた。しかし、飯島彰己前社長は「順送りではイノベーション(革新)は起きない」と抜擢した理由を語っている。

 だが、飯島氏が安永氏を選んだというより、「実力者である槍田松瑩会長(6月末に退任)の意向による人事」と社内では囁かれている。先輩役員が多数いる中で、安永氏が独自カラーを出すまでには時間がかかる。飯島氏が院政を敷くかどうかを商社業界は注目していたが、3月25日の取締役会で4月1日に会長になる飯島氏が代表権を持つことが決まった。

 海外事業に強い新社長を支える経営体制が必要と判断、代表権を返上するとした当初の方針を変更した。飯島氏は周囲に「院政は敷かない」と語っていたが、経済ミッションに同行したり、海外で提携交渉をするため、会長就任後も海外出張が減らないため、代表権を残すことにしたのだという。社長に昇格した安永氏がCEOとして任務を遂行することに変更はないとしているが、「代表権のない会長に退く」という当初の潔さが薄らぐことは間違いない。

●デンソーの有馬浩二次期社長(57)


 自動車部品大手デンソーの有馬浩二氏は14人抜きだ。末席の専務執行役員から副社長以下14人を抜いて異例の大抜擢となった。取締役を経験せずに社長に就くのは、同社では初めて。6月の株主総会後の取締役会で正式に決定する。有馬氏は生産技術や生産部門の出身で、買収したイタリア子会社の立て直しで手腕を発揮した。