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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

政府、「厳しい歳出抑制」のまやかし 「3年で増加額1.6兆円」のウソ、実は2倍?

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安倍晋三首相(「首相官邸HP」より)
 先般、政府は財政再建計画を盛り込んだ「骨太方針」を閣議決定した。新聞記事等では、歳出抑制は「目安」止まりだが、今回の骨太方針は比較的厳しい歳出抑制となったという印象を与える報道も多い。例えば、以下の記事である。

「政府は30日夕の臨時閣議で経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略、規制改革実施計画をそれぞれ決定した。(略)財政再建を促すため、18年度までを集中改革期間と位置づけ、2つの目安も設けた。第1の目安は、18年度の基礎的財政収支の赤字幅を国内総生産(GDP)の1%程度にすることだ。(略)第2の目安は、国の政策経費である一般歳出の伸びに設けた。安倍政権がこの3年間で一般歳出の増加を1.6兆円に抑えた基調を、18年度まで守る。高齢化で社会保障費の年1兆円増が見込まれるなかで、抑制された水準ともいえる。(以下、略)」(6月30日付日本経済新聞記事『歳出抑制「目安」止まり、成長重視 骨太方針閣議決定』)

 上記記事を素直に読むと、「国の一般歳出の増加が3年で1.6兆円だから、高齢化で社会保障費が年1兆円増加する中で、今回の財政再建計画は、歳出全体の年平均の伸びを約0.5兆円に抑制する厳しい計画である」旨の勘違いをする読み手も多いはずだ。だが、これは誤解だ。何が誤解なのか。以下、順番に説明しよう。

「実質的な増加」の意味


 まず、国の「一般歳出」は、国(一般会計)の予算規模を意味する「一般会計の歳出」とは異なる概念で、「一般会計の歳出」から「国債費」と「地方交付税等」という支出項目を除いた支出をいい、一般会計の歳出全体を意味するものではない。このため、国債費や地方交付税等の増加は許容できる可能性がある。

 次に、一般歳出の増加を3年間で1.6兆円に抑制するという表現も若干注意が必要だ。確かに、骨太方針の25ページ脚注には、「国の一般歳出の水準の目安については、安倍内閣のこれまでの3年間の取組では一般歳出の総額の実質的な増加が1.6 兆円程度となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018 年度(平成30 年度)まで継続させていく」(以下「文章A」という)旨の表現が盛り込まれている。

 しかし、骨太方針の30ページには、「安倍内閣のこれまで3年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5 兆円程度)となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018 年度(平成30 年度)まで継続していくことを目安とし、効率化、予防等や制度改革に取り組む。この点も含め、2020 年度(平成32年度)に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」(以下「文章B」という)旨の表現が盛り込まれている。