東京都は、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて観光客が増加することを見据え、観光ボランティア活動を通じて外国人旅行者に東京の魅力を紹介する「街なか観光案内」を6月からスタートさせた。その「街なか観光案内」の観光ボランティアスタッフのユニフォームが、今話題のそれである。
ユニフォームのデザインに関して是非を論じるのは自由だが、多くのメディアの報道に気になる点がある。
例えば、「netgeek」は、「2020年東京オリンピックのボランティア制服」が、過去の大会のユニフォームと比べてダサいと表現している。ほかにも、インターネットメディアをはじめとして、テレビ各局の情報番組でも、このユニフォームが「東京オリンピックの公式ユニフォーム」と誤った表現で報じている。
ダサいかどうかは見る人の判断に任せるとして、これがオリンピックボランティアのユニフォームではない点を強調したい。複数のメディアが間違って報道しているため、誤認している人も多いようだ。
そもそもオリンピックボランティアとは、大会運営の総務をサポートしたり、観客や関係者への詳細情報の提供、ごみ処理、情報処理、オリンピック委員会(JOC)のメンバー接遇、通訳、警備などの裏方業務を担う。また開会式・閉会式のパフォーマンスを行うメンバーもボランティアだ。
ボランティアは開催国だけではなく、世界各国から参加する。ボランティアに選ばれるには決まった手順を踏まなければならない。一般的には、オリンピック開催の約2年前に申し込みを行い、面接を受け、1年前までに採用が決まる。その後、大会の公式ユニフォームやIDパスなどが支給されるのだ。
ただし、時期については前後することもある。1998年の長野冬季オリンピックの際には、開催の3年ほど前に申し込み期間が設けられた。20年の東京オリンピックに関しては、16年から8万人規模で募集するといわれている。
東京の観光ボランティアが、オリンピックの公式ボランティアと誤解された要因としては、ユニフォームを発表した会見場の背景に東京オリンピック・パラリンピックのロゴがあったこと、オリンピック招致の決め台詞のひとつとなった「おもてなし」が、ボランティアグループのチーム名に取り入れられ、ユニフォームの背中にも大きくデザインされていることなどが挙げられる。
このユニフォームは、オリンピックボランティアが着るものではないことを理解した上で、来年、オリンピックボランティアに申し込んでみてはいかがだろうか。一生に一度の貴重な経験を得ることができるはずだ。
(文=平沼健/ジャーナリスト)