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政治介入&疑念まみれで「汚れた」世界遺産 軍艦島登録に地元・長崎が猛反発の真相

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長崎県端島、通称軍艦島(「Wikipedia」より/Hisagi)
 「明治日本の産業革命遺産」(鹿児島県など8県の23施設)が、世界文化遺産に登録された。韓国は外相合意を反故にして最終局面まで猛反対。ユネスコ(国連教育科学文化機関)に持ち込まれた日韓の争いは、世界遺産が抱える「政治介入」という難題をあぶりだした。

 政治介入は2013年の国内選考時点からあった。世界文化遺産の選考を仕切ってきた文化庁の推す「長崎の教会群とキリスト教関連資産」(長崎・熊本県)を降ろし、内閣官房がまとめた「産業革命遺産」と差し替えたのは首相官邸の裁定だった。長崎県や長崎市は「政治介入」だと反発しており、世界文化遺産登録を素直に喜べないでいる。

 世界文化遺産の2015年登録に向けた、政治推薦枠1枠をめぐる産業革命遺産と教会群の戦いは熾烈だった。産業革命遺産は鹿児島県が、教会群は長崎県が登録を目指し「九州対立」といわれた。

 長崎県の中村法道知事は定例会見で「産業革命遺産の15年登録に反対」と明言。文部科学省に提出した意見書に、長崎県内の産業革命遺産は「審査に堪えうる熟度に達していない」と明記した。隠れキリシタンが長崎市の大浦天主堂で信仰を告白した「信徒発見」から、今年は150年の節目の年になる。教会群は隠れキリシタンが江戸時代から潜伏していた島々で、信徒たちが建立した教会で構成されている。

 政治力が結果を左右した。鹿児島から岩手まで8県に及ぶ「オールジャパン態勢」で挑んだ産業革命遺産の地元には、有力政治家が多い。最後は、菅義偉官房長官の裁定で政治決着したといわれている。

 幕末の思想家・吉田松陰が主宰した松下村塾(山口県萩市)を産業革命遺産に組み入れたことが決め手になった。同県は安倍晋三首相のお膝元である。薩摩(鹿児島)と長州(山口)の、平成版「薩長連合」が結成されたわけだ。松下村塾と石炭や造船、製鉄など生産施設で構成される産業革命遺産との関係を疑問視する声は多いが、松下村塾が遺産登録の可能性が高かった教会群から推薦をもぎとる切り札になった。産業革命遺産側の作戦勝ちである。

軍艦島


 産業革命遺産の象徴が、長崎市の端島(はしま)炭坑。通称、軍艦島である。長崎県と長崎市が産業革命遺産に登録されることに最後まで抵抗したのが、この軍艦島だった。軍艦島は長崎港の南西約19キロに浮かぶ周囲1.2キロの無人島。1890年に三菱社(後の三菱財閥の中核)が採炭を開始した海底炭坑である。1916年には日本初とされる鉄筋コンクリートのアパートが建てられた。高層の建造物が建ち並ぶ島影が長崎で建造された「戦艦土佐」に似ていることから、軍艦島と呼ばれるようになった。