テレビやラジオでサバサバした物言いで活躍している小島慶子氏。元TBSアナウンサーで現在はタレント・エッセイストとマルチに活躍している彼女だが、何もかもうまく人生を歩んできたわけではない。
『屈折万歳!』(小島慶子/著、岩波書店/刊)は、人との距離がつかめず、家族との関係もうまくいかず、学校でも家でも、テレビ局でも空回りしては落ち込む日々を送っていた小島氏の“屈折体験”をふまえ、「どこにも居場所がない」「自分のことを好きになれない…」と悩む10代に向けて、自分と折り合いをつける工夫を紹介する一冊だ。
家族に対して、息苦しさや煩わしさを感じるという10代の人も少なくないかもしれない。
10代、20代の頃の小島氏にとっても、家族は「すごく欲しいのにすごく疲れるもの」だったという。10代、20代で家族との関係に苦しんだ小島氏は、摂食障害になる。そして、30歳のときに子どもを出産し、ようやく両親や姉との関係を見つめ直そうとする。カウンセリングを受け始め、33歳で不安障害を発症。30代は、その治療と子育てに追われ、両親や姉とは会わず、小島氏にとっては捨てた家族だった。40代の今は、新しく両親や姉を捉え直し、「パパ、ママ、お姉ちゃん」ではなく、一人一人名前を持った人として見るようになったという。彼らも一人ずつ名前を持った不完全で真面目な人間だということに気づいたのだ。時間を経て、家族に対する捉え方も変わる。親離れ、自立とは、「その人を役割で見ず、ちょうどいい距離を自分で決める」ということに気付いたという。
家族というものは、こうでなくては! という形に縛られてしまうものだ。けれど、自分も相手も、昨日と今日では考え方も感じ方も変わるものだ。
人間は必ず毎日毎日変わってしまう生き物。その日々変わってしまうもの同士が、変わらない関係を築けるわけがない。微調整を繰り返し、そのときそのときで最良の形を常に更新し続けていくのが、最も希望の持てる関係なのだ。「愛は永遠!」ではなく、「愛は終わりなき上書き!」だと小島氏は述べる。
貧困や命の危険が迫るわけでもなく、傍から見たら恵まれていた環境にいたとしても、その人にはその人なりの真剣な悩みや苦労はあるものだ。小島氏自身も、何不自由のない家庭に育ち、学習院大学を卒業後、アナウンサーとしてTBSに入社という経歴は、傍から見れば順風満帆な人生に見える。しかし、自身のこと、家族のことでたくさん悩んできた。そんな小島氏のまっすぐな言葉は、悩みを持つ人たちの力になるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。