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神樹兵輔「『縮小ニッポン国』のサバイバル突破思考!」

TPP、語られぬ「毒素条項」の恐怖…国民の健康を脅かし、米国企業の金儲けを保護

文=神樹兵輔/マネーコンサルタント
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 繰り返しますが、TPPは貿易の自由化を旗印に掲げていますが、要は米国の多国籍大企業による「金儲け」を推進するだけの協定にすぎません。それに日本の輸出大企業が便乗しているのが実態なのです。

 もちろん、対中国経済包囲網の強化という政治戦略的狙いもあるようです。最近はこちらを強調して、TPP本来の目的から国民の目をそらすのに熱心です。影響力を増す中国が都合の良い中国式のルールをはびこらせる前に、米国は世界のGDPの4割を占めるTPP12カ国の経済ルールを先に構築したかっただけなのです。

 つまるところ、このTPPが条約として発効すれば、条約は法律よりも強い効力を持つため、日本国内のあらゆる「秩序」に変更をもたらす事態も頻発してきます。

ISD条項

 TPPには「毒素条項」とも呼ばれる「ISD(ISDS)条項」が含まれています。「Investor-State Dispute Settlement」の略で「投資家対国家の紛争解決」を意味します。FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)にも入っているものですが、訴訟大好き米国の多国籍大企業は、これによって相手国政府を訴えることが認められます。日本企業が途上国を訴えるケースは想定できても、米国政府を相手に訴えるケースはほとんど想像できないでしょう。

 このISD条項は、本来は途上国政府が政変で転覆した際などに、先進国の進出企業が投資で被った損害を補償してもらうための条項でしたが、NAFTA(1994年に発効した、米国・カナダ・メキシコ3カ国の北米自由貿易協定)の頃から変質し、投資家や企業が相手国の制度や規制や政策、慣行などにまで異議申し立てを行うようになってきたという経緯があります。

 たとえば、日本に進出してきた米国企業が、日本の法律により自社の営業活動が阻害されて損害を被っていると考えた場合には、世界銀行傘下の「投資紛争解決国際センター(ICSID)」に提訴できるのです。ICSIDでは、原告企業と被告(訴えられた国)の選任が各1名で、双方が合意したもう1名の、たった3者で判定が行われます。しかも上訴が認められない一発裁定です。これで、その国の国会で決められた法律でさえ、勝手に覆してしまうこともできるのです。

 実際、NAFTAでは、カナダ政府が法律でガソリンの有害物質添加を禁じたところ、米国企業がカナダ政府を訴えました。結局、カナダ政府は敗訴を恐れて賠償金1300万ドルで和解に応じ、その後規制を撤廃するに至っています。

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