燃料電池車は切り札か
本田技研工業(ホンダ)が開発したスマート水素ステーションでは、1キログラムの水素を製造するのにおよそ50キロワット時の電力量を使う。電事連の発表では、2013年のCO2排出係数は0.570キログラム/キロワット時である。1キロワット時の電気を発電すると0.570キログラムの二酸化炭素(CO2)を排出するということだ。
したがって、ホンダのスマート水素ステーションで1キログラムの水素を製造するには、50キロワット時×0.570キログラム/キロワット時で、28.5キログラムのCO2を排出することになる。
ところでトヨタ自動車の燃料電池車であるMIRAI(ミライ)の実燃費がしだいに明らかになってきた。5.2キログラムの水素で走れる距離は450キロメートルほどである。その場合、1キロメートル走るのに5.2キログラム/450キロメートルで、0.0116キログラムの水素を使うことになる。この量の水素を製造すると、上記の計算から28.5×0.0116=0.331キログラム、すなわち331グラムのCO2を排出することになる。331グラム/キロメートルだ。ちなみにJC08(国土交通省が規定する燃費測定方法)のモード燃費は、5.2キログラムの水素で650キロメートル走れるとしている。この場合で、228グラム/キロメートルである。
トヨタの新型プリウスのJC08燃費はリッター40キロメートルだ。この場合のCO2排出量は、58グラム/キロメートルとなる。ミライよりも新型プリウスのほうが、ずっとCO2排出量は少ない。バイオ燃料を使わずとも、エンジン車は元気なのだ。
プラグイン・ハイブリッド車もある
CO2排出量が少ないもうひとつの例が、プラグイン・ハイブリッド車である。EUではその量を下記のように計算する。
・エンジンだけで走った場合のCO2排出量(グラム)÷(25キロメートル+電池で走れる距離)÷25キロメートル
たとえば、エンジンだけで1キロメートル走ったときに200グラムもの大量のCO2を排出する(200グラム/キロメートル)大型SUVで、それが電池だけで50キロメートルも走れるとすると、計算は200グラム÷{(25+50)÷25}=67グラム/キロメートルとなる。これはガソリンの場合、リッター29キロメートルという燃費だ。なんと超省燃費車になってしまうのである。
この計算方法の是非は論議のあるところだが、プラグイン・ハイブリッド車にすることでエンジンはしばらく生き延びられるともいえる。