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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

ジカ熱、日本感染拡大の最悪事態は起こる?薬なく謎だらけ、ブラジル渡航者と接触NG?

文=新見正則/医学博士、医師
ジカ熱、日本感染拡大の最悪事態は起こる?薬なく謎だらけ、ブラジル渡航者と接触NG?の画像1「Thinkstock」より

 今日は、ブラジルの話で盛り上がっています。この夏、オリンピックの応援に行くかどうかですが、心配なのはジカ熱です。“極論君”は「WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出したのだから、そんな病気が流行っているブラジルに行くなど馬鹿げている」という意見です。“非常識君”は「ブラジルに行った人やブラジル人とは、日本でも決して接触しないように常日頃心がける」と主張しています。“常識君”は「妊婦がジカ熱に罹ると小頭症の子供が生まれる可能性が高くなるが、感染しても死亡することなどなく風邪と同じような症状で治まるので、妊娠していなければブラジルに応援に行く予定はまったく変更しない」ということです。

 さて、ジカ熱の症状は発熱、頭痛、関節痛、皮疹、眼球結膜の充血などで風邪の症状と似ています。そして、ジカ熱で死亡した例はまだ報告がありません。死亡例はないのですが、妊婦が感染すると小頭症の子供が生まれる可能性を否定できません。ブラジルはジカ熱流行時のほうが、感染がなかった時期と比べて数十倍に上る数の小頭症の子供が生まれています。つまり可能性は高そうだということです。

 感染は通常、蚊によって媒介されます。感染者が蚊に刺され、そしてその蚊が別の人を刺すことによってジカ熱の感染が拡大するのです。「通常」というのは、性的な接触で感染することがまれにあります。つまり蚊を介さずに、人から人に感染することが性的な接触で数例起こっています。性的な接触以外で感染が起こるかどうかは不明です。ジカ熱はまだ詳細がよく判明していないことが、なんとなく不気味なイメージを醸し出しています。

 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ジカ熱地域への妊婦の渡航を控えるように警告は出していますが、妊婦以外の者が渡航することに関しては特段の警告は出していません。ブラジルでジカ熱感染が猛威を振るっていることは周知の事実です。ジカ熱に対するワクチンもない、そしてジカ熱を引き起こすウイルスに直接作用する薬剤もない現状では、ジカ熱が大流行しているブラジルにあえて渡航することは馬鹿げているという理論も決して間違ってはいません。

 極論君の主張のように、特別な用事がなければ、あえてジカ熱感染の大流行地帯に行くことは控えたほうがいいということも一理あります。

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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