借金まみれの貧困・歯科医急増…長時間待たされ治療数分&何度も通院の元凶!回避策が?
2015年12月2日付本連載記事『悲惨すぎる歯科業界!年収2百万円以下、廃業の嵐…なぜあの医院には国内外から患者殺到?』にて、歯科医の4人に1人が年収200万円以下、という事実を書いたが、そもそもなぜ歯科医が困窮するのかという原因について触れてみたい。
医療法人社団いのうえ歯科医院理事長で歯科医の井上裕之氏に、歯科医が置かれている現状を単刀直入に聞いてみたところ、次のように本質的な答えが返ってきた。
「歯科医院は設備投資が欠かせないため、多くの歯科医が借金をして病院を開業しています。借金の返済のために売り上げを上げなければなりませんが、収入に限界がある保険診療しか行わない歯科医院がほとんどで、そのために自転車操業となり苦しんでいるのです」(井上裕之氏)
保険診療では国がルールを定め、処置内容により保険点数というものが決められている。たとえば、単純な虫歯治療なら273点などとなっている。来院する患者1人当たりの保険点数は平均500~600点で、1点10円の計算なので売り上げ換算では5000~6000円となる。そのうちの1~3割が患者負担である。一日の来院数を20人と仮定した場合、よくて合計1万2000点、売上高は12万円となる。結構な収入かと思っていたが、実情は違うようだ。
歯科医院は開業当初から多額の投資が必要でありローン返済に追われる。さらに治療に使われる材料費や、歯科衛生士・歯科助手・受付の人件費、テナント代、光熱費、機器のメンテナンス費など、想像以上にコストがかかる構造となっている。
この高コスト体質を、患者1人当たりの単価が低い保険診療でカバーしていくには患者数を上げていくしかなく、余裕のない経営を余儀なくされるのだ。筆者が取材した歯科医院の中には、患者の満足度は関係なく高い保険点数をノルマとして、治療より医院維持が目的化しているところもあった。さしずめ“ブラック歯科医院”といったところだ。
保険外診療のほうが患者にも歯科医院にもメリット大
さらに取材を進めていると、意外な事実が判明した。国による「過剰診療」という判定の壁である。ある歯科医は、「過剰診療が怖くてひとりの患者に十分な治療をすることができない」と言う。
地域により違いはあるものの、患者1人当たりの保険点数は平均500~600点であると先に述べたが、この水準を超えた場合、過剰診療と見なされて厚生労働省より注意を受けてしまうという。必要のない治療を行って保険点数を稼いでいる疑いがあると見なされるのだ。