介護離職、年間10万人で社会問題に…会社側の「間違った説明」が原因の場合も
介護や看護を理由とした離職・転職者数は年間10万人を超える(内閣府「平成27年(2015年)版高齢社会白書」)。団塊の世代が後期高齢者に突入する「2025年」には、全人口の3人に1人は65歳以上と見込まれている。必然的に今後、親の介護に携わる働き世代も増えることが予測される。従業員だけでなく、企業にとっても介護離職問題は切実な問題だ。そこで、具体的な防衛策にはどんなものがあり、ポイントは何かを検証していきたい。
両立のための制度とは
介護離職をした人に理由を聞くと「配偶者の理解が得られない」「自分以外に介護をする人がいない」といった個人的な理由のほか、「会社にこれ以上迷惑をかけられない」「職場で理解が得られない」といった回答をする人が多い。
厚生労働省は、育児・介護休業法により、仕事と介護の両立のための制度として、「介護休業制度」「介護休暇制度」「対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置」等を定めている。概要を簡単に紹介したい。
【介護休業制度】
労働者は、事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族一人につき、最長93日の休みを取得できるが、原則1回のみに限られた。このため、有給休暇をやりくりする人が多かった。2017年からは対象家族一人につき、要介護状態に至るごとに93日を限度として3回までの分割取得が可能となる予定(現在、国会で審議中)。
【介護休暇制度】
要介護状態にある対象家族の介護および、通院等の付き添い、介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行等の世話を行う労働者は、事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が一人の場合は年5日、二人以上の場合は年10日を限度として、介護休暇を取得することができる。
【対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置】
事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置として、対象家族一人につき、介護休業をした日数を合わせて少なくとも93日間利用可能な勤務時間の短縮の措置(注)を講じなければならない。
(注)短時間勤務の短縮等の措置、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度のいずれかの措置。この他にも、「時間外労働を制限する制度」「深夜業を制限する制度」を設けている。