平均5万円…高級化するランドセル、なぜ狭い市場に多数企業が殺到&注力?
少子化時代でも勢いが増すランドセル
ランドセル市場の過熱ぶりは毎年のように高まっている。10年以上前は、クリスマスや正月が最大の商戦時期だったが、5年前には秋口に、この数年は夏場に、そして今年はさらに1~2カ月前倒しされてゴールデンウイーク(GW)の前から商戦がスタートしている。
ランドセルは、基本的には子ども向けの商品であり典型的な市場縮小型の冷えた商品であるはずだが、なぜこれほどまで熱を帯びているのだろうか。船井総研のデータによると、1990年代から2000年代にかけては平均単価が3万5,000円前後だったが、この数年で5万円前後まで跳ね上がっているようだ。
軍隊を起源とするランドセル
今日のランドセル市場をみる前に、まずはその歴史を振り返ってみよう。日本で最初にランドセルが生まれたのは江戸時代末期。徳川幕府が洋式軍隊制度を導入するのに伴い、オランダの軍事用布製リュックサックを取り入れたのがきっかけだ。もともとはオランダ語の「ランセル」だったが、それがなまって「ランドセル」へと変化した。やがて皇族・華族の子弟の教育機関だった学習院が、1885年に馬車や人力車での通学を禁じ、学用品や弁当などを入れて通学させたことから、学用品などを入れる学童用の背嚢(はいのう=ランドセル)としての採用が始まった。
その2年後の87年、当時の内閣総理大臣であった伊藤博文が、皇太子殿下(大正天皇)の学習院初等科の入学を祝し、箱型で革製の頑丈なランドセルを特別につくらせて献上したものが、現在のランドセルの原型となり、徐々に全国の小学校へと普及するようになった。
ランドセル市場の成功要因
一昔前のランドセルといえば、男の子は黒、女の子は赤の2色で、どの商品も似たりよったりの画一的な商品ばかりだった。それが、なぜこれほど商戦が盛り上がり、高級化が進んだのか。
この近年のランドセル市場の成功要因はいくつかある。そのひとつは、少子化と並行して進展している高齢化による「6ポケット」だ。6ポケットとは、子ども1人に対して両親・両祖父母の計6人の財布=ポケットがあるという現象であり、これにより大勢の大人が少ない孫にたくさんのお金を使う状況が生まれている。