燃費の測定に偽装が忍び込む
4月以降、三菱自動車工業やスズキの燃費データ不正問題が世間を揺るがしているが、カタログ燃費の測定は、台上で行う(シャシーダイナモ試験)。タイヤで駆動される、地下に設置された大きなローラーの上に、しっかりワイヤーで固定した試験車を乗せ、エンジン(モーター)を始動し決められた速度でタイヤを回転させローラーを回して測る。このときにローラーに抵抗をかけ、回りにくくする。この抵抗が空気抵抗であり、ころがり抵抗であり、車重であり、タイヤ等の回転慣性力である。
風洞で測定した空気抵抗や、実際に走らせて測ったころがり抵抗の値をシャシーダイナモに入力し、ローラーに回転抵抗を加えて実際の走行状態を再現し、燃費を測定する。入力する測定値を少しいじれば、たちまちローラーの抵抗は変わり、燃費が変わる。ここに燃費データ偽装の悪意が忍び込む余地がある。
自動車とは加減速する乗り物
自動車は、一定の速度で走ることなどめったにない。常に加速し、減速し、ときに停止しアイドリングする。それは道路、信号、渋滞の強さ、ドライバーによって千変万化する。走り方と環境で燃費は違うが、それでは燃費の数値をカタログに載せられない。ということで、一般的な走行パターンを想定(JC08)し、そのパターン通りに台上で自動車を加速・減速し、一定速度で走って試験し、燃費として公表しようということになっている。
しかし、実際の走行状態は百万通りある。上記の走行パターンはたった1つだから、実燃費とカタログ燃費が違って当たり前である。違って当たり前と知れば、怒っても仕方ないと思えるのだが、怒りの真相はそういうことではない。私たちは大量生産品のシャツを買うとき、あるいは統一テストに回答するときのようにいつでも、どこでも、みんなと同じであることを求められる。「実燃費とカタログ燃費が乖離するのは、あなたがJC08のように運転しないからだ」といわれているような気がするので、ユーザは腹が立つのである。
燃費偽装のやり方
さて、空気抵抗やころがり抵抗は、実は気圧、湿度、気温等で変わってしまう。たとえば、高地でボールがよく飛ぶのは、空気抵抗が少ないからである。高地では気圧が低く、空気の密度が小さいからだ。したがって、気圧が低ければ自動車の空気抵抗は小さくなる。低気圧のときは燃費が良い。ただし、ほんの少しだから判別不能だ。