ビジネスジャーナル > 社会ニュース > たばこ休憩、年間休日19日に相当?
NEW

喫煙者だけ許されたたばこ休憩、年間休日19日に相当?法的には全社員禁煙強制できる!

文=松原麻依/清談社
【この記事のキーワード】, , , , ,
喫煙者だけ許されたたばこ休憩、年間休日19日に相当?法的には全社員禁煙強制できる!の画像1「Thinkstock」より

 職場で大半を占める非喫煙者は、休憩時間以外はデスクに張りついて仕事をしているのに、喫煙者たちは頻繁に喫煙所に行き、たばこを吸って休憩している。しかも、多くの企業では、この「たばこ休憩」が暗黙の了解として認められている。

 筆者は常々不満に思っていたのだが、なぜ喫煙者だけに特別な休憩時間が許されるのか。「そんなのずるい」「不公平だ!」と思っているのは筆者だけではないだろう。

 実際、神奈川県横浜市では、市議会議員が「約4000人の市職員が1日約35分のたばこ休憩をとると、各々年間19日も休んだことになり、約15億4000万円の損失が出る」と試算。すでに大阪府の大阪市や堺市、兵庫県神戸市などの自治体では、職員の喫煙が禁止されている。

 しかし、自治体がたばこ休憩の禁止に動きだす一方、一般企業の場合は、たばこ休憩を規制する会社は圧倒的に少ない。企業による従業員の喫煙規制は、なぜ進まないのか。そもそも、会社を全面禁煙にするのは可能なのだろうか。

喫煙者は採用NG!星野リゾートの徹底方針

「正当な理由があり、就業規則として明文化するのであれば、喫煙者のたばこ休憩は制限することができます」

 そう語るのは、社会保険労務士の庄司英尚氏だ。この「正当な理由」とは、例えば「職務専念義務」に反しているかどうかが、ひとつの指標になるという。

「『職務専念義務』とは、文字通り、勤務中は職務に専念する義務のことです。たばこを吸うこと自体は基本的人権のなかで実質的に認められていますが、憲法の定める『自由』は、適正な理由があれば制限されることがあります。

 会社に雇用されている以上、就業時間中はこの『職務専念義務』を全うしなければならないので、これに反すると判断された場合は規制の対象になり得るのです」(庄司氏)

 仮に、1時間ごとに10分間、あるいは30分ごとに5分間のたばこ休憩をとれば、喫煙者は8時間勤務のうち80分間も職務から離れていることになるが、ここまでいくと、いきすぎた「自由」に思える。このように、周囲の従業員が「不公平」だと感じたり、会社側が業務に差し支えがあると判断したりした場合は、たばこ休憩も規制の対象になるという。

「私自身の考えとしては、午前中に10分の休憩を1回、午後に10分の休憩を2回程度までが勤務時間中のたばこ休憩として許される範囲ではないかと思っています。あるいは、従業員全員に休憩時間を与えて、喫煙者はその時間内であればたばこを吸っていいというようなルールづくりをするのも、ひとつの方法です。非喫煙者側がそのようなルールには反発するかもしれませんが……」(同)

 ただし、さらに踏み込んで会社を全面禁煙にするとなると、いろいろと難しい部分もあるようだ。旅館の「星のや」で知られる星野リゾートグループでは、「従業員のたばこ休憩は企業競争力を弱める」などの理由から、喫煙者は採用しない方針を明確に打ち出しているが、多くの企業は非喫煙者であることを採用条件にはしていない。

「会社側も喫煙者であることを問題にしていなかった以上、急に『明日から一切吸うな』と言うのは筋が通りません。どうしても全面禁煙にするなら、少なくとも3カ月以上前から告知すべきだし、採用活動の時点で、星野リゾートのように『会社として喫煙者は採用しない』という方針にすることも可能です」(同)

 なかには、「健康面への考慮」という名目で従業員に禁煙外来を紹介したり、禁煙に成功した従業員に手当を支給したりする企業もあるという。インスタントコーヒーや飲み物のギフトなどを扱うネスレ日本では、従業員の禁煙治療にかかる費用を会社で負担。自動車部品卸売会社のコアーズインターナショナルは、非喫煙者に「健康手当」として毎月2000円を支給している。

成人男性の喫煙者は80%から30%に減少

 実は、デスクワークをメインとする会社員の間で「たばこ休憩」が問題になるようになったのは、ここ十数年の話にすぎない。一昔前までは、デスクワークをしながらの喫煙が可能だったので、たばこを吸うために席を離れる必要もなかったのである。

 しかし、2003年に受動喫煙の防止を謳った「健康増進法」が施行され、それに伴って企業には分煙が義務付けられた。同時に、00年代以降の健康志向の高まりで喫煙者の数がどんどん減少。1960年代のピーク時、日本の成人男性の80%以上が喫煙者だったが、いまや約30%にまで減っている。非喫煙者が多数派となったことで、企業内でも「たばこ休憩」に厳しい視線が注がれるようになったのだ。

「以前なら、たばこ休憩には『生理現象』という言い分も通りましたが、最近では、たばこは『嗜好品』とみなされています。喫煙に対する見方も厳しくなっている現在、一般企業の禁煙化は今後も進んでいくでしょう。

 その一方、喫煙者からは、『たばこ休憩がダメなら、就業中のコーヒーブレイクや社員同士のおしゃべりも禁止にすべき』といった声もあります。各々休息をとっているのに、たばこ休憩だけ厳しく取り締まるのは理不尽だという意見です」(同)

 確かに、喫煙者のたばこ休憩を不公平だと思う筆者自身、「お前のネットサーフィンはどうなんだ」と言われれば、返す言葉がない。こうなると、もはやお互いの揚げ足取りである。

「たばこ休憩が原因で従業員同士の確執が生まれれば、不要な『対立事項』をつくっているということで、規制の理由になるかもしれません」(同)

 従業員同士が争うようなことがあれば、そのほうが企業にとっては大きな損失であり、生産性にも影響を及ぼすかもしれない。喫煙者への風当たりがいっそう強まるなかで、そもそもなぜたばこ休憩を制限する必要があるのか、非喫煙者もあらためて考えてみるべきだろう。
(文=松原麻依/清談社)

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

喫煙者だけ許されたたばこ休憩、年間休日19日に相当?法的には全社員禁煙強制できる!のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!