9月20、21日に日本銀行の金融政策決定会合が開かれる。注目を集めているのが、物価や経済の情勢、そしてこれまでの金融政策の効果に対する“総括的検証”だ。検証という言葉を素直に解釈すると、国債の大量買い入れ、マイナス金利政策など日銀の積極的な緩和策の効果を冷静に判断することになるはずだが、黒田東彦日銀総裁はこれまでと変わらず、「さらなる金融緩和に限界はない」との強弁を維持している。
そうした黒田総裁のスタンスが大きく変化しない限り、9月の日銀決定会合では追加金融緩和措置が打ち出される可能性が高いと見るべきだろう。一段の金融緩和が実施されると、株式や為替などの金融市場に相応のインパクトを与えることになる。初動動作としては、株価はしっかりした展開になり、為替市場では日米金利差の拡大によって円が売られ、ドルが買われやすくなるだろう。その場合には、年初来の円高傾向に一旦、一服感が出ると見られる。
日銀の金融機関への配慮
注目を集める日銀の総括的検証について、経済専門家やストラテジストらはさまざまな見方を持っている。そうした専門家のなかで共有されるひとつの手法は、日銀が国債買い入れ額をレンジで示す可能性だ。今まで日銀は、「長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う」としてきた。具体的な数字を明言してきたのである。それを、『70~90兆円』というように一定のレンジで示し、柔軟で機動的な国債買い入れを行うことができるようにするのである。
1月29日の会合におけるマイナス金利導入以降、投資家は利回りの確保に躍起になり、短期から超長期まで国債の流通利回りは大きく低下した。その結果、期間ごとの利回りを結んだイールドカーブ(利回り曲線)の平たん化が進んだ。
また、多くの国債の利回りがマイナスになったこともあり、銀行や生命保険会社は、国債に投資しても十分な金利収入を確保できなくなっている。それらの業界からは日銀の政策に対する批判は強い。金融庁も、そうした状況を憂慮する姿勢を示している。
この状況を放置することは、日銀の信認にかかわる問題になりかねない。よって、日銀が市場動向を見つつ、市場に配慮した国債買い入れを重視することは相応の意味がある。政策により国債の利回りをプラス圏に押し上げれば、金融機関は国債への投資で収益を稼ぎ出すことができるようになる。金融機関、特に中小の金融機関にとっては大きな福音だ。投資家の間で、「日本銀行は金融機関のために、期限の長い国債の流通利回りを正常化しようとしている」との憶測にもつながる。