政府は、日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖炉もんじゅを廃炉にする方向で最終調整に入ったと報じられている。
かつて「夢の原子炉」と呼ばれたもんじゅだが、原子力規制委員会はJAEAによる運営では安全性が確保できないとして、運営主体の変更を求めていた。また、現在停止中のもんじゅの再稼動には4000~5000億円の追加費用がかかるとの試算もあり、政府は国民の理解を得ることが困難と判断したようだ。
だが、もんじゅは国の核燃料サイクル政策の中核を担う機関であり、原子力政策そのものを見直さなければならなくなる。
高速増殖炉の運転中は摂氏500度を超える高温となるため、冷却媒体として液化ナトリウムが使用されている。液化ナトリウムは、空気に触れると発火し、水に触れれば大爆発を起こす。だが、もんじゅでは液化ナトリウムの取り扱いがずさんで、実際に1995年に発火してナトリウムが漏れる事故を起こした。さらに、それを隠蔽していたことが発覚して問題となった。
その後、長らく運転が停止したままになっていたが、地元の反対運動などを押し切って2010年に運転再開にいたった。再開後も、性能試験中に誤警報や故障などのトラブルが頻発し、さらにトラブルはすべて迅速に公表するように念を押されていたにもかかわらず、事故を過小評価して報告を怠った。そして、作業員の操作ミスによる人為的事故が続いたことで運転を停止し、それが現在まで続いている。
95年の事故後も根本的な解決策を講じていないJAEAの体質に、原子力規制委員会が見切りをつけたといえる。
核燃料サイクルを断念できないワケ
核燃料サイクルは、国策として推進されてきた原子力計画だ。原子力による発電の過程で発生する使用済み核燃料を、リサイクルして再び燃料にすることで半永久的に発電が可能になると考えられてきた。
そのため、使用済み核燃料は原発を保有する大手電力会社にとっては「資産」ととらえられている。ある試算では、全国の電力会社を総計すると使用済み核燃料の資産価値は15兆円ともいわれている。しかし、リサイクルできなくなれば、この使用済み核燃料は価値を失いごみとなるだけでなく、処理が困難で未来永劫管理し続けなければならない莫大な「負の資産」となる。