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石徹白未亜「ネット依存社会の実態」

Yahoo!知恵袋の相談内容はコピペばかり?悪意のある釣りタイトルはこうやってつくられる

構成=石徹白未亜/ライター
Yahoo!知恵袋の相談内容はコピペばかり?悪意のある釣りタイトルはこうやってつくられるの画像1「Thinkstock」より

「妻の不倫相手にこれから会いに行く」「弟とセックスしてしまった」など、掲示板系サイトに書かれる相談や体験談の一部は、実話でなく趣味で創作エピソードを投稿して読者を釣る「釣り師」といわれる人間たちの活動である――。

 こうした事実が明らかにされている『2ch、発言小町、はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス/Hagex)。本書には、そんな「釣り師」たちがなぜ釣りを行うのか、釣りであることをどこで見極めるか、などをはじめ、実際に釣り師へのインタビューも掲載されている。

 本書は「釣り」というニッチなテーマを掲げているように見える一方、「いかにデマに踊らされないか」「釣られないか」「インターネットにはどのような悪意があるのか」について学ぶことができ、ネットリテラシーを高めるための1冊でもある。

 ネット黎明期からのネットウォッチャーであり、人気ブロガーでもある著者のHagex氏に、ネットのトレンドや問題点について話を聞いた。

「Yahoo!知恵袋」の相談はコピペばかり?

–個人ブログやツイッターの場合、発言がその人のものとして残ります。一方、釣り師の主戦場は「2ちゃんねる」や「発言小町」、「Yahoo!知恵袋」などの匿名環境です。ネット上で話題になる“大ヒット”を生んだ釣り師は、匿名であることに対して、さびしくないのでしょうか。

Hagex氏(以下、Hagex) 匿名だからこそ、自由に演じられて無責任にできてしまうのがいいのではないでしょうか。たとえ身元がわからなくても、日頃使っているハンドルネームであれば変なことはできませんが、匿名でその場その場の発言なら自由ですよね。

 名前を出さないからこそうまくいっているというのは、書いた人もよくわかっています。名前を出して書いてしまうと、本当の話かどうか、見ているほうもシビアに判断してしまいますよね。

Yahoo!知恵袋の相談内容はコピペばかり?悪意のある釣りタイトルはこうやってつくられるの画像2『2ch、発言小町、はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス/Hagex)

–釣り師は、ネットユーザーのなかでも匿名性を一番上手に使っているともいえますね。

Hagex 「はてな匿名ダイアリー」も一所懸命に書き込んでいる人が多いですが、やはり責任なく好き勝手にいえることに魅力を感じる人が多い。「はてな匿名ダイアリー」を書く人ははてなユーザーなので、「はてなブログ」など自分の意見を発信できるサービスを利用しているはずなのに、わざわざ「匿名ダイアリー」に書く。それは、匿名の魅力があるからだと思いますよ。

–「保育園落ちた日本死ね」も「はてな匿名ダイアリー」でしたね。本日(取材日)の「Yahoo!知恵袋」のランキングを見ると、「進学校に通う娘が、バスの中で座席に座り参考書をみていたところ、いきなり……」「至急 旦那がリビングで寝ていて起こしにいったら、ひとりでしていた後でした……」などと、読ませる工夫がしてあり、うまいですよね。

Hagex そうですね、「Yahoo!知恵袋」は閲覧者が多い分、嘘か本当かわからない読ませる投稿が多いですね。人気の投稿は「釣り」の可能性が高いので、疑いながら読むと面白いですよ。一方で「Yahoo!知恵袋」の特徴として、過去の投稿を何度もコピペしている事例が多いんです。現在人気の投稿を検索してみると、実は3年前の投稿だった……ということは珍しくありません。第三者が勝手にコピーして投稿しているのです。

–何がその人をコピペに駆り立てているのでしょうね……。「Yahoo!知恵袋」もネットメディアも、タイトル勝負ですよね。人気ランキングを見ると、人の興味を惹いて思わずクリックさせてしまうような「釣りタイトル」は強い。煽るようなことはよくないですが、「釣り」をしないでどうクリックしてもらうかというのは難しい問題です。

Hagex ネットはタイトルがとても重要です。ただ、人の目を惹きつければよい! というわけでなく、あまり過激にしすぎるとスルーされるので難しいところです。ちょうどいいのは「人の心をひっかけながらも悪意がない」というレベルですね。「悪意」は注目を集めるのには簡単ですが、多用すると飽きられるし、テクニックとしては低級です。

–ご著書のなかには、Hagexさんが「2ちゃんねる」の投稿を中心に、考察、抽出した「釣り師が人をひっかけるために好む」という対立系の単語一覧が掲載されていますね。

Hagex これらを組み合わせれば、釣り系のタイトルはつくれますね。例えば「近所に住む自然派シングルマザーが、彼女がハマっている水素水を売りつけてくる」みたいな内容だと、人気の投稿になりますね。

吉田沙保里に関するデマブログ作者の素早い逃走

–ネットのなかで簡単に見つけることのできる悪意は距離の取り方が難しく、「ネットから離れたほうがいいのでは」と思えるほど荒んでいる人も見かけます。一方、Hagexさんはネット黎明期の頃から長年ネットウォッチと発信を続けていますが、一定の距離感を保ち続けていますよね。

Hagex やはり、ネットは恐ろしい場所です。距離感を間違えると、魅入られてダメになってしまいます。ウォッチ対象との距離感はしっかりと守っています。

 また、習慣の力もあります。私は毎日サイトを更新していて、それがルーティン作業になっているんですよね。ショッキングなニュースを見たり、自分の書いたブログが注目を集めたりしても、日々同じ作業をすることで気持ちにムラが出ない、ラグビーの五郎丸選手のキックをする前のポーズのように、同じことをしているから同じ気持ちでネットに接することができる、というのもあります。

 炎上はもちろんですが、意外と自分で書いた記事がバズった時に、気持ちに変調をきたす人は多いんです。ネットで注目されるのは麻薬と一緒で、とても刺激的です。だから、また注目を受けたく、もっと過激に、もっと面白く書こうとして、平常心を崩してしまう。しかし、毎日同じこと、サイト更新を淡々と行う習慣があれば、バズっても次の日は平常運転に切り替えられるようになります。

–その境地には、すぐに達することができたのでしょうか?

Hagex 私はメディア関連の仕事をしているので、情報を発信してリアクションをもらうことに慣れていたという意味で、下地はあったのかもしれません。多くの人は、読者からリアクションをもらった時、特に悪意の反応には、どう対応したらいいかわかりません。本当はそれをちゃんと知るべきで、学ぶ場所があればいいのですが、現在はありません。

炎上なども、まさにどうしたらいいかわからない事例のひとつだと思いますが、どう対策をとればいいでしょうか。

Hagex 一般の方と著名な方で分かれますね。まず一般の方の場合、安易に火消し対策をしようとすると、逆効果になってしまい、ますます炎上することが多々あります。とりあえず、炎上したら1週間はネットを見ないようにしましょう。周りも自分も落ち着いてから対処したほうがうまくいきます。

 リオオリンピックの女子レスリング決勝で、吉田沙保里選手が敗れてしまいました。この時に「吉田選手に勝って金メダルを取った選手は、吉田選手に憧れてレスリングを始めたという報道があったが、それはデマだ」というエントリーが注目を集めました。しかし、この「デマ」というその指摘こそが事実でなかったことが判明し、炎上。これを書いた人は早々にブログ自体を削除してしまいました。

–炎上覚悟で注目を浴びたかったのかもしれませんが、撤退してしまったということは、そういう意図でもなかったのか、反響が大きすぎて驚いてしまったのか……。

Hagex この炎上事件は、修正コメントを出して謝れば、事態は沈静化していたでしょう。しかし、多くの人はブログ記事で失敗した時はどう対処していいかわからないし、外野からガンガンいわれて動揺してしまいます。だからこそ、先ほど言ったように、ネットを遮断して1週間ほど見ないのがおすすめです。

違法のラインを知ることで戦い方ができる

–著名人の場合は、どうでしょうか? 最近では、タレントの大島薫さんが炎上しましたが……【※1】。

Hagex 著名人の場合はいろいろな権利関係があるので、難しいですね。炎上した時は私に相談してください(笑)。大島薫さんの炎上ですが、結局、野獣先輩の捜索は行われませんでしたね。大島さんが思った以上に叩かれたというのと、何より人を捜索する様子をネット上で生放送するのは、きわめて違法性が高いと指摘されたのが大きかったのではないでしょうか。

 現実世界はもちろん、ネット上でも法律を守るのは大切です。逆にいえば、法にさえ触れなければ、なんでもやっていいのです。もし、過激なことや世間から非難が出そうな行為をしようとしたら「これをやったら捕まるか、捕まらないか」で考え、実行する、しないの判断をするのが吉です。もちろん道徳的な判断もありますが、これは法律ほどはっきりした線引きがない。

–確かに、炎上事例でおなじみの「アイスケース(に入る)」も法に触れますよね。

Hagex 2013年、ローソンのアイスケースに入った写真をツイッターにあげた事例ですよね。この場合、器物損壊罪や威力業務妨害罪に抵触する可能性が高いです。また、この行為によって店が閉店してしまったら、店側から損害賠償請求が行なわれるでしょう。こちらは民事ですが。

–「違法かどうか」という指針があることで、一気にクリアになりますね。

Hagex そうです。それがわかっていれば、法に触れない範囲でファイティングポーズをとることもできます。「これ以上は危ない」というラインがわかっていれば、ネット上での活動に線引きができます。

 そこを「なんとなく」で進めると、ネットから叩かれるし、訴えられてしまうこともあります。ネットでは証拠がすべて残ってしまいますから。もし外野に何をいわれても、法に触れていなければ、「私は悪くない」という心の拠り所ができるんです。「悪いとわかっていてやる」と「何も知らないでやる」では、全然違います。

–少し前の話になりますが、雨宮まみ氏と北条かや氏の事例の場合は、「違法かどうか」の観点から見れば、法には触れていないといえそうですね【※2】。

Hagex そうですね。もし、雨宮さんが「こじらせ」を商標登録していれば、北条さんの行動は「法的に問題」として違った動きを見せたでしょうね。

–ありがとうございました。

 後編では、長年にわたりネットを見てきたHagex氏が選ぶ「一番印象に残ったネットの事件」と「ネットでもめてしまった際の“ネットケンカ道”」について、さらにHagex氏の話をお伝えする。
(構成=石徹白未亜/ライター)

【※1】「Hagex-day.info 2016年8月13日」(野獣先輩探索で大島薫炎上)
【※2】「デイリーニュースオンライン 2016年3月31日」(北条かや女史と「こじらせ(女子)」炎上を巡る面倒くさい話|やまもといちろうコラム)

石徹白未亜/ライター

石徹白未亜/ライター

ライター。得意分野はネット依存・同人文化(二次創作)・ファッション。ネット依存では自身の体験をもとに書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)を執筆、NHK『ハートネットTV』、フジテレビ『バイキング』、朝日新聞、週刊文春等メディア出演多数。個人に向けたスタイリストとしても活動しており、著書に男性スーツ本『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。』(CCCメディアハウス)。ユニ・チャーム株式会社でのスーツ着こなしセミナーなど、ファッション研修も多くの実績あり。おうち大好きインドア派。同人誌と串揚げとしめさばとビールで生きてます。
●「主なプロデュース作品
『何になりたいかわからないけど就活を始めるあなたへ まず自己分析をやめるとうまくいく』辻井啓作(高陵社書店)
『自分のイヤなところは直る! 』牧野秀美(東邦出版)
『英語がサクッと口から出る 英語の「筋トレ」4センテンス繰り返しCDドリル 初級編 』渡部泰子(主婦の友社)

Twitter:@zPvDKtu9XhnyIvl

『2ch、発言小町、はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』 創作話を作り、読者の反応を楽しむ「ネット釣り師」たち。時には世論を動かすきっかけを作ってしまう彼らは、どういった手口で読者をダマし、そしてトリコにするのか。その鮮やかな手口の数々を、彼らの動向を15年間追ってきた人気ブロガーであるHagexが明らかにする。 amazon_associate_logo.jpg
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。 amazon_associate_logo.jpg

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