25年以上にわたり1000本を超すテレビCMを中心にマーケティング戦略立案に携わってきた株式会社テムズの鷹野義昭氏が、新たに年間2万本以上オンエアされるといわれるCMについて、その狙いやポイントはどこにあるのかなど、プロの視点からわかりやすく解説する。
鹿児島県志布志市のふるさと納税PR動画が、「女性蔑視」「犯罪想起」「グロテスク」といった批判を受け、公開からわずか5日間で公式サイトから削除されました。うなぎを擬人化し、“うなぎ少女”を男性が飼育するという内容です。何百万円もの血税を投入したうえに、市長名によるお詫びの公告に至り、さらには海外メディアからも取り上げられる事態となった問題の本質はどこにあるのでしょうか。
テレビCMにおけるマーケティング戦略の視点から、その背景と今後の地方PR動画の行方についてフォーカスしていきます。
助成金がもたらした「雨後の筍」状態の地方PR動画
こうした地方PR動画が注目されブームが過熱化してきたのは、ここ数年のことです。2013年から立ち上がった「おんせん県おおいた」や、高知県の「高知家」などが火つけ役といえるでしょう。地方プロモーションの目先が、「ゆるキャラ」から動画に移った潮目の時でもあります。
そして、さらにその動きを加速させたのが、15年に総務省が打ち出した移住促進のためのプロモーション動画制作の助成金。最大500万円の助成金が、申請した地方自治体に国から交付されました。「まちのムービーをつくるなんて、県単位くらい大きくないと予算確保ができない」と思っていた市町村が一気に動きだした瞬間です。
いまや、自治体のほとんどがPR動画を持っている状況。10月5日現在、全国の市町村数は1718ですので、その数は優に数千を超えていると推察されます。
秀逸な地方CMと地方PR動画を紹介する「ぐろ~かるCM研究所」サイトでも地方PR動画が激増し、約2割を占める状況になっています。では、同研究所で取り上げている“攻めてる”PR動画を見てみましょう。
【埼玉県・行田市プロモーション動画】
世界最大としてギネス世界記録に認定された、行田市の「田んぼアート」。お祝いにやってきたのは、なんと宇宙人。地上50mの展望タワーに突如飛来した全身グレーのグレイ。胸の赤いゼッケンには「オメデトウ」の文字。祝福を届け、そのまま帰っていくのかと思いきや……。
【三重県・津市プロモーション動画】
「“つ”のうた」に乗せ、展開される奇妙な世界。レスリングの吉田沙保里選手は対戦相手を全力で噛み、老紳士は頭の上に鳩を乗せ、若い女性は髷のエクステでご満悦。この世界に欠けている“あるもの”とは何か。歌と映像、視聴者を引きつける言葉遊びが秀逸です。最後に明かされる歌声の主には驚きが待っています。
※PR動画の解説は、「ぐろ~かるCM研究所」より抜粋