「あなたが一番影響を受けた本はなんですか?」との問いに、19~20世紀イギリスで活躍したアイルランド出身の劇作家、ジョージ・バーナード・ショーは、「銀行の預金通帳だよ」と答えたという有名な逸話があります。
ブラックジョーク的な切り返しですが、確かに預金通帳は私たちの行動に影響を与えるものです。しかし、なぜか家計のやりくりが苦しく毎月毎月、給料前に同じような悩みを私たちは繰り返します。将来のため、老後のため、先行きの暗い世の中だからこそ、十分な貯蓄をしなければならないのに、私たちはムダづかいをしてしまいます。
さて皆さん、部屋を見渡してみてください。その中に「なぜこれを買ったのだろうか」と疑問に感じる物や、「まったく開けていない」というようなホコリをかぶった箱はありませんか。
たとえば、あなたが何気なく見ているインターネットサイトですが、そのサイトに出てくる広告は、誰にでも同じものが出てくるのではなく、自分の趣味に合ったものが出てくるようになっているのを知っていますか。サイトを見ているあなたの思考に合わせて最適化した広告が出てくるので、あなたが興味深いものしか出てこないのです。そこでついその表示された広告をクリックしてしまうのは、まんまとその広告主に誘導されているといえるのです。
このような手法は、モノを売ったりサービスを提供する側にとっては当たり前のことで、インターネットが発達する前ももちろん、実店舗で行われていました。お客がひとつでも余分に買ってくれるように店側も考えてレイアウトしたり、もう一度来店してもらうために手厚くサービスをするのです。ひと昔前まで、小売業は経験則をもとにさまざまな工夫をしていましたが、今の時代は心理学や脳科学で判明している脳のクセを利用したアプローチで少しでも消費をしてもらおうとしているのです。