医師が「がん検診」を受けない理由…検診で総死亡数増も、食の欧米化で「がん患者」増
去る10月20日、ラグビー界の至宝、平尾誠二さんが胆管細胞がんで亡くなった。享年53歳。昨年はオリンピック柔道重量級2連覇の斉藤仁さん、女優の川島なお美さんも同じがんで、ご両名とも54歳で逝去された。
胆管は、肝臓(肝細胞)で合成された消化液(胆汁)を十二指腸まで運ぶ管で、肝臓の内部を通って外部へと流れてゆく。胆管細胞がんは肝臓内の胆管にできるがんで、肝臓の外の胆管にできた場合は肝外胆管がんという。
胆管細胞がんはがんの死因の約4%で、症状としては、黄疸、発熱、食欲不振など、胆石と似た症状が発現する。手術が可能な場合の5年生存率は約40%、手術ができない場合のそれは約10%である。
ウイルス(主にC型、B型肝炎ウイルス)が原因で発症する肝細胞がん(肝がんの90%)に比べると予後が格段に悪い。もちろん西洋医学的には原因不明である。
さて、こうした有名人のがん死が報道されると、翌日から日本中の医療機関でのがん検診の受診者が増えるという。
新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医学博士の著書『医者の私が、がん検診を受けない9つの理由』(三五館)が話題になっている。
がん検診を受けた人と、そうでない人を追跡調査(ランダム化比較試験)したデータによると、以下の結果が導かれるといい、これが岡田氏ががん検診を受けられない理由だという。
1.大腸がん検診では、総死亡減少が認められない
2.肺がん検診では、検診を受けた人のほうが総死亡率が高いという結果もある
3.乳がんや前立腺がんでは、無治療でも数年でがんが消滅したり、がんが腫大・転移せず天寿を全うする例がある
早期発見より予防が大切
1975(昭和50)年の医師数とがん死者数はほぼ同数の約13万人。その後、40年間で医師数は31万人に増え、がんに対する研究や治療は格段に進歩したとされるのに、昨年、がんで亡くなった者は36万人超。1960(昭和35)年から、9月はがん征圧月間と銘打って国をあげてがんの早期発見、予防のキャンペーンがなされている。しかし現実はこの「様」である。
ある新聞の健康欄に、「川島なお美さんや、任天堂の岩田聡社長(胆管がん=享年55歳)は人間ドックや健康診断も定期的に受けられていたと聞いています。なぜがんが見つからなかったのでしょうか」という旨の質問が投稿されていた。それに対する医師の回答は、以下の通り振るっている。
「人間ドックには、たくさんの検査項目がありますが、信頼できるのは、身長と体重だけです」