テレビCMも新聞広告も「終わり」なのか?販売増に直結しなくても打ち続ける理由
「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。
本連載ではここまでマーケティングの4Pにおける「Product」(製品)の説明をしてきたが、今回からその4Pのひとつである「Promotion」(プロモーション)について、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。
広告が売上増に直結しない?
――広告や宣伝といったプロモーションは、いったいなんのために行うのでしょうか。
有馬賢治氏(以下、有馬) 企業は自社製品を流通させる上で、消費者や流通業者にその存在を知らせるのはもちろんのこと、製品の情報を正しく理解してもらう必要があります。つまりプロモーションとは、自社製品の告知とその特徴を説得するための、企業の情報発信活動である、といえます。
――しかし、テレビCMなどを中心に、広告費は莫大な金額になります。
有馬 広告費にお金をかけるくらいなら、その分製品の単価を下げてほしい、と考える消費者はいますが、広告をしないことには顧客が製品自体を知らない訳ですから、多くの人に買ってもらうことは期待できず、結局は単価を上げないと採算が取れないことになってしまいます。また、売上の増大のために莫大な広告費を投入する意味があるのか、ともよく問われますが、他社との競争に負けないように製品の存在とその魅力を知ってもらうための企業活動としては、広告にお金をかけることは、程度問題はありますがごく自然なことなのです。
――広告を出すことによって、売上が上がり、広告費をペイできるということでしょうか。
有馬 広告の効果を議論するとき、売上と広告費が直接的にリンクしているかといったら、実はそこまでではないといわれています。ただ、広告論的にはどれくらいの人に存在と特徴を知ってもらえたのか、しっかりとメッセージ内容を届けることができたのかが重要であり、必ずしも買ってもらうことが主目的ではないと考えられています。一つの製品の販売で企業活動が終了してしまうのなら、売上の上昇こそが広告の目的といえるでしょう。しかし、実際企業は継続して次々と製品を開発し、流通させます。たとえ一度のプロモーションによって、売上が上がらなくても、消費者に好感を持ってもらえれば、良い企業イメージに繋がります。広告は、今後発売する製品やブランドを展開しやすくさせることも大きな目的のひとつなのです。